革新的なディーゼルエンジン開発のカギは、ディーゼルエンジンの弱点を完全に克服することにあった。つまり、排気ガスを清浄化し、騒音と振動を抑え込み、高速でも快適に走り、しかも価格も消費者の手の届く水準にまでおさえること。これまでのディーゼルエンジンの持っている弱点をことごとく覆す、そんなディーゼルエンジンの開発こそがカギだ。マツダの開発陣はこの問題をどう克服し、ディーゼルエンジン開発に取り組んだのか。
「マツダのディーゼルエンジンは排ガス不正の独VWとどこが違うのか?」(http://president.jp/articles/-/17515)の後編。
なぜクリーンディーゼルはいいことずくめなのか
マツダの開発陣は従来の発想とは違った方向を向いていた。
パワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部長・寺沢保幸は次のように語っている。
「圧縮比を下げる、開発の目標はこれです。ディーゼルエンジンの基本は、燃料と空気をよく混ぜることであり、よく混ぜればそれだけ排気ガスの浄化性能が向上します。よく混ぜるためにはどうするか? 圧縮比を下げてやるのが有効な手段です。なぜなら、圧縮比を下げてやればそれだけ混合気がよく混じり合うための時間を長くできるからです」