このままでは会社がいずれ危なくなる。しかも大震災、超円高で先行きも見えず、日本全体の雇用環境が今後どうなるかもわからない。こうした緊張感の中、エンジニア一人一人が意識を研ぎ澄まし、総力を結集して軽自動車の歴史に名を刻むことになる「N BOX」を生み出した。
DNA受け継ぐ証左
ホンダは以前にも、バブルに乗り遅れて業績が低迷し「三菱自動車に吸収合併される」と噂された時期があった。だが、そのときは革新的なミニバン「オデッセイ」を生み出し、窮地を乗り切った。今「N BOX」のヒットがホンダを支える。
浅木はこう振り返る。「ホンダは危機に見舞われると、何か出てくる。これは偶然じゃない。何かが根底にあると思う」。「N BOX」の誕生は、挑戦を忘れないホンダのDNAが生き続けている証左である。浅木の胸の中にはきっとこんな言葉が詰まっている。=敬称略(小熊敦郎)
あのホンダが他社に追随? ライバルから学ぶ姿勢で“進化” に続く