では、なぜ売れないのか。ホンダ、そして自分の感覚が世間とズレていることに浅木は気づく。ホンダは、長らく北米向け量産車を収益源にし、“アメリカの男”の好みや体格に合うクルマ開発に徹してきた。これに対し、軽のユーザーの多くは日本の女性。まるで対極だった。「軽に対し『これはクルマじゃないだろう』という価値観が社内に正直あった」と浅木は打ち明ける。
潜在ニーズを発掘
元凶を見いだした浅木が考えたのは、単なるニーズではなく、顧客さえ気づかない潜在ニーズを見つけ出し、他社がマネできないホンダの技術で実現すること。「これができれば圧倒的に強いクルマができる」
浅木たちのチームは、綿密な市場調査やクリニックと呼ぶユーザーを交えた検討会など、市場との対話を繰り返した。そして、そこから軽のメーンユーザーである母親たちの潜在ニーズがうっすらと見えてきた。