SankeiBiz for mobile

安倍首相、中南米歴訪 米国の裏庭で日中「オセロゲーム」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

安倍首相、中南米歴訪 米国の裏庭で日中「オセロゲーム」

更新

チリのミチェル・バチェレ大統領(左)と会談に向かう安倍晋三(しんぞう)首相=2014年7月31日、チリ・首都サンティアゴの大統領府(共同)  中南米の伝統的な親日国を歴訪中の安倍晋三首相(59)は、経済協力を深めて成長市場を取り込み、各国との連携を通じて中南米地域や国際社会での日本の影響力拡大も狙う。ただ、中南米では中国も進出に積極的だ。米国の「裏庭」で繰り広げる日中の勢力争いは“オセロゲーム”のように激しさを増している。

 「アジアを含む一部の国では、力や抑圧による一方的な現状変更の試みがある。法の支配の考え方を国際社会に浸透させたい」

 首相は7月28日の日カリブ共同体(カリコム)首脳会合で、中国の海洋進出を念頭にくぎを刺した。

 首相は最後の訪問国のブラジルをはじめ各国で、中国が東シナ海や南シナ海で「力」によって問題を引き起こしていることを念頭に、国際法の順守や「積極的平和主義」を打ち出す日本への賛同を求めた。

 「日本の対中南米政策は、歴史的な友好協力関係に基づく独自の絆を共にしている」

 首相は7月31日の日チリ首脳会談でこうも訴えた。歴史的な結び付きを強調し、日本の最先端技術を基に積極的に日本の売り込みを展開。同行筋は「首相の外遊全てが中国を意識しているわけではないが、対中という意味で今回の歴訪の手応えは十分だ」と話す。

 ただ、首相に先んじて中南米を歴訪したのは中国の習近平国家主席(61)だ。習主席は7月に大型インフラ投資などの巨額の経済支援を手土産にブラジル、ベネズエラなどを歴訪。新興5カ国によるBRICS首脳会合では「いかなる勢力も侵略の歴史を覆そうとすることを許してはならない」とわざわざ歴史問題を持ち出し、日本を牽制(けんせい)した。

 すでに中国と中南米諸国との貿易総額は昨年(2013年)、日本の約3.6倍まで拡大。外務省幹部は「中南米で中国は着実に浸透と台頭を図っている」と警戒する。

 中国が着々と自陣を固める中、日本は伝統的な親日国以外の国を味方に取り込むための「次の一手」も必要になる。(ブラジリア 是永桂一/SANKEI EXPRESS

 ≪日ブラジル、安保理改革や経済協力で連携≫

 中南米5カ国を歴訪中の安倍晋三首相は8月1日昼(日本時間1日深夜)、ブラジルの首都ブラジリアの大統領府でジルマ・バナ・ルセフ大統領(66)と会談する。両首脳は「法の支配」など基本的価値観を共有することで一致し、中南米で影響力を拡大する中国を牽制。首相は国連の安全保障理事会改革や経済協力など幅広い分野での連携もアピールする。

 両首脳は「南シナ海での紛争を含む国際紛争は武力や威圧によらず、平和的に国際法にのっとって解決されるべきだ」と指摘。中国の海洋進出を念頭に、自由で安全な公海、上空通過の必要性について言及する。

 安保理改革では両国にインド、ドイツを加えた4カ国グループ(G4)が常任理事国入りを目指し連携することを確認。首脳・外相レベルの政策対話を促進することでも一致する。

 首相は、ブラジル国内の穀物輸送や輸出に必要な鉄道や港湾、道路などのインフラ整備について全面的な支援を表明。首脳会談後には、両国の関係者がブラジルの海底油田開発で、日本の技術を導入した巨大洋上基地を建設することを盛り込んだ海洋資源開発促進の覚書に署名する。

 安倍首相はルセフ大統領と会談する前日の7月31日には、訪問先のチリのサンティアゴでミチェル・バチェレ大統領(62)と会談した。チリが世界最大の銅産出国であることを踏まえ、資源開発分野での連携強化で一致。両国とも地震による被害が多いため、防災面の協力拡大も確認した。会談後、こうした内容を盛り込んだ共同声明を発表した。

 日本が輸入する銅の48%はチリ産。首相はチリとの関係強化で資源の安定的な確保を目指す。難航する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結に向けて双方が取り組むことでも合意した。(ブラジリア 是永桂一/SANKEI EXPRESS

ランキング