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集団的自衛権 行使容認、月内に合意 公明「白旗」 党内のガス抜き急ぐ

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集団的自衛権 行使容認、月内に合意 公明「白旗」 党内のガス抜き急ぐ

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自公首脳会談のため、首相官邸に入る安倍晋三(しんぞう)首相(左)と、参院外交防衛委員会を出る公明党の山口那津男(なつお)代表=2014年6月19日、東京都千代田区(鴨川一也撮影)  安倍晋三首相(自民党総裁)と公明党の山口那津男(なつお)代表は6月19日、首相官邸で会談し、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更について、与党協議で早期に結論を得る方針を確認した。22日が会期末となる今国会中の閣議決定を断念することでも一致したが、政府は閣議決定の時期について、首相の外遊出発前の7月4日で調整しており、与党合意は月内に実現する見通しだ。

 首相は会談で「与党協議をしっかりお願いしたい」と議論を加速するよう求めた。山口氏は「(公明党内で)いろいろな意見が出ている」と語り、党内の意見集約が難航していることへの理解を求めた。会期は延長せず、閉会後も自公両党で協議を続けることを申し合わせた。

 山口氏は会談後、記者団に「与党協議の結果に基づかないと閣議決定はできない。誠実に協議し結論を出すのが重要だ」と述べた。

 党首会談に先立ち、山口氏は党中央幹事会で「会期末を迎え、最後の議論を充実させたい」と述べ、与党協議が最終局面にあるとの認識を表明した。井上義久幹事長も「合意に至ることが大事で、どこかで結論を出さなければならない」と強調した。

 両党は20日に8回目の与党協議会を開き、閣議決定原案で、日本への武力行使が発生していなくても国民の権利が「根底から覆されるおそれ」がある場合には武力を行使できるなどとした自衛権発動の「新3要件」について協議する。

 ≪公明「白旗」 党内のガス抜き急ぐ≫

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更の閣議決定が「待ったなし」となる中、公明党執行部は行使容認にかじを切っており、事実上「白旗」を上げている。今回の政府・自民党との攻防は、安倍首相の固い意志に押される形で、公明党執行部の勢いは失速した。ただ、党内には、なお慎重論がくすぶっており、執行部は党内のガス抜きを急いでいる。

 くすぶる慎重論

 6月19日夕に国会内で行われた公明党の外交安全保障調査会と憲法調査会の合同会議。出席者からはこの日も行使容認に対する不満や不安が相次ぎ、「(行使容認の根拠となっている)国際情勢の変化とは、どういうことを指すのか」といった根本的な質問が出るほどだった。

 焦りの度合いを強める執行部。山口代表は19日昼の安倍首相との会談で、党内の状況を説明。与党協議の公明党側の責任者、北側一雄副代表も党内の空気を伝えるため、19日朝、自民党の高村正彦副総裁と都内のホテルで朝食をとりながら、こう語った。

 「うちは大変なんです。もう少し静かに見守っていただけませんか」

 高村氏は黙ってうなずくだけだった。

 政府は安全保障法制整備に関する閣議決定案の概要のうち、自衛権発動要件の部分について、公明党の主張を受け入れ、1972(昭和47)年の政府見解を基に「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある場合」を挿入した。すると公明党は「おそれ」という文言に反発し、行使容認の範囲をさらに狭めるよう求めはじめた。

 「青いトマト」

 安倍首相が「今国会中」としてきた閣議決定の時期も、公明党の党内事情に配慮しているうちに、断念せざるを得なくなった。そして、公明党が今も反発しているのが、戦闘下でのシーレーン(海上交通路)の機雷掃海だ。

 北側氏は先週、選挙区の堺市産の高級トマトを高村氏に差し入れており、最近は「うちのトマトはまだ青い」と周囲に漏らす。党内が完熟していない状況を言いたいようだが、このままでは責任与党として「未熟」(自民党幹部)とのそしりは免れない。 

 ≪法案成立率97% 「1強多弱」裏付け≫

 第186通常国会は6月20日、22日の会期末を前に事実上、閉幕する。衆参両院で与野党勢力が異なる「ねじれ」が解消したこともあって、今国会に政府が提出した新規法案の成立率は97.5%に達する見通し。90%を超えるのは第1次安倍晋三政権下の2007年の通常国会以来7年ぶり。野党側は論戦で見せ場をつくれず、自民党の「1強多弱」を裏付ける形となった。

 政府が提出した新規法案81本のうち改正地方教育行政法や地域医療・介護総合確保推進法など74本が成立。20日の参院本会議でさらに5本が成立する運びだ。新規条約18本も全て承認され、昨秋の臨時国会から懸案となっていた日トルコ原子力協定なども承認された。

 新規法案の成立数は昨年(2013年)の通常国会に比べ16本の増加。成立数が70本を超えるのは、菅直人政権時代の11年以来だが、その年は通常国会の会期を70日間も延長していた。延長しないで80本近くが成立するのは、昨夏の参院選で衆参ねじれが解消し、国会運営が終始、政府・与党ペースだったことが大きい。(SANKEI EXPRESS

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