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集団的自衛権 論議は法廷闘争の様相

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集団的自衛権 論議は法廷闘争の様相

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ASEAN各国常駐代表と会談する公明党の山口那津男(なつお)代表=2014年3月24日午後、衆院第2議員会館(酒巻俊介撮影)  【安倍政権考】

 安倍晋三首相主導の憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の行使容認に向けた動きが活発化している。政府は、「日本近隣の有事」「機雷掃海」「対米支援」の3事例について「日本の安全に深刻な影響を及ぼす事態」に該当するとして限定的に行使を容認する方針を固めた。自民党と事前調整した上で、5月に有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の報告書をまとめる方針。自民党内には必要最小限度で行使を認める「限定容認論」への支持が広がっており、今後は行使容認に慎重姿勢の公明党への説得工作がカギとなりそうだ。

 自民「限定容認論」を支持

 行使容認の対象とするのは(1)日本周辺の有事で米国が集団的自衛権を行使している際に、米軍への攻撃排除や攻撃国に武器供給する船舶への立ち入り検査を行う(2)機雷で封鎖されたシーレーン(海上交通路)の掃海活動(3)米国が攻撃を受け同盟国と自衛権を行使している状況下で、攻撃した国に武器供給する船舶を日本に回航する-の3つのケース。

 たとえば、エネルギーの大半を輸入に頼っている日本にとって、シーレーンが機雷などで封鎖されれば、国民生活に深刻な打撃を与えるが、現在の憲法解釈では戦闘行為としてまかれている機雷を除去することは集団的自衛権の行使に当たるとしてできないことになっている。

 朝鮮半島有事での対米支援などと加え、こうした事態は現行の政府の憲法解釈で認められている「必要最小限度」の自衛権に含まれると判断し、対象を限って集団的自衛権の行使を認めるわけだ。

 一方で、他国の領土での集団的自衛権の行使については、公明党などの強い反発が予想されるため原則的に見送り、行使を領海や公海に限定して容認する方向となった。

 政府が当初予定していた法制懇の報告時期が当初の4月から5月以降にずれ込んだのは、自民党側の強い意向が働いたためだ。党には党内議論を法制懇の報告書にできるかぎり反映させたい思惑がある。党と法制懇が両輪となって限定容認方針を首相に示すことで、閣議決定に向けた環境整備が進む公算だ。

 首を縦に振らぬ公明

 安倍首相の次のハードルは慎重姿勢を崩さない公明党との論戦だ。

 自民党の高村(こうむら)正彦副総裁と公明党の山口那津男(なつお)代表は4月3日、東京都内で会談し、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認問題をめぐる協議をスタートさせた。安倍首相が2日、公明党との調整を急ぐよう高村氏に指示したからだ。

 自民党幹部によると、会談は約2時間行われ、高村氏は「国の存立のため必要最小限度の範囲内なら、集団的自衛権は認められる」と限定的に集団的自衛権を認める自民党の基本方針を説明。しかし、山口氏は首を縦には振らず、丁寧な議論を求めた。

 「限定容認論」を主導する高村氏は党内の取りまとめに自信を持っている。ただ、11月に想定される沖縄県知事選や来年春の統一地方選を見据えれば、行使容認の決断を遅らせたくないのが本音だ。とはいえ、議論を急げば、公明党の態度を硬化させる懸念もある。

 高村氏は1959年の砂川事件の最高裁判決に依拠して、集団的自衛権の限定的行使は可能と主張。判決が党内で大勢を占める「限定的容認論」の支柱になっている。一方、山口氏はこの判決について、「集団的自衛権を視野に入れていない」と反論。これに対し、高村氏は「国連憲章で個別的あるいは集団的自衛権が認められている中で、全く視野に入っていなかったとは考えられない」と再反論。両者は弁護士出身で弁が立つだけに、限定容認論の是非を巡る議論はさながら白熱する法廷闘争のようになりそうだ。(比護義則/SANKEI EXPRESS

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