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教委改革 政局絡み、なお多難
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参院予算委員会で、安倍晋三(しんぞう)首相(左)に話しかける下村博文(しもむら・はくぶん)文科相=2014年2月5日、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)
安倍晋三首相が進める教育委員会改革を巡り、政府と自民党が教育行政の最終責任者(執行機関)を教委に据え置き、教育長と教育委員長を統合した常勤の「代表教育委員(仮称)」を新設して首長に任免権を持たせる案で大筋合意した。
教委改革は、いじめ問題などで対応が遅れがちの教委に対する不信感払拭のために行われるが、自民党内では教委の「政治的中立」にこだわる公明党に配慮した改革案とも受け取られ、首長の権限強化を求めていた首相に近い自民党議員らを中心に反発が広がっている。
政府・与党の改革案は下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相と自民党の渡海紀三朗(とかい・きさぶろう)元文科相らが2月13日、国会内で協議して決めたものだ。首長が教委政策の理念となる「大綱的方針」の策定に際し、首長と教委が意見交換する協議体を設ける方向でも一致した。
そもそも中央教育審議会は昨年(2013年)12月、首長が直接、教育長を任免することを前提条件に、教育行政の最終責任者(執行機関)を教委から首長に移す「A案」と、現行通り教委に据え置く「B案」を答申した。ただ「B案」は「別案」でしかなく、安倍首相に近い下村氏はA案を支持していた。
これに対し、公明党は、あくまで教委の執行機関としての機能維持にこだわった。また、自民党の文科相経験者らからも「首長が自民党系であるとはかぎらない」として、首長に教育行政の権限を集中させることに疑問の声が上がっていた。
下村氏はあくまで首長を執行機関として権限を強化する中央教育審議会に沿ったA案を後押し、国会審議でも強く主張していたが、公明党や自民党の一部から教委の「政治的中立」が保てないとの懸念は最後まで消えなかった。
「しようがないですね」
下村氏は13日、渡海氏らとの協議で自らの主張を取り下げることにしぶしぶ同意するしかなかった。下村氏が公明党に配慮し、連立の枠組みを重視することを選んだ結果、教委改革を盛り込んだ地方教育行政法改正案は政府・与党が目指す3月提出に向け前進することにはなった。
ただ、教委改革が一筋縄でいくとはかぎらない。実は13日、下村氏と渡海氏との会談後に開かれた自民党の教委制度改革に関する小委員会(委員長・渡海氏)では、詳細な制度設計が必要だとして、改革案の了承を次回会合に持ち越したのだ。
また、A案は日本(にっぽん)維新の会の選挙公約にも近く、小沢鋭仁(さきひと)国対委員長はA案への支持を明言。維新は14日、民主党とA案を軸に協議しており、野党側が与党に揺さぶりをかけることも否定できない状況だ。
さらに、自公連立を優先させるための思惑が透けてみえる改革案に、自民党内からは「党内の意見集約はまだできていない」(中堅)という声も上がっており、公明党との協議入りが遅れる可能性が出ている。
当の安倍首相は12日夜、公明党の富田茂之幹事長代理と会食した。教育委員会制度改革を自民党の遠藤利明教育再生実行本部長と富田氏がそれぞれ担当していることを踏まえ、「遠藤氏と富田氏が一番詳しいので任せます」と述べ、様子見のままだ。
与党作業チームのメンバーの1人は、「政策課題として教委改革に一生懸命取り組んできたのに、公明と維新が絡む政局になってしまった。原点に戻ってほしい」と顔を曇らせるしかなかった。(比護義則/SANKEI EXPRESS (動画))