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集団的自衛権の行使容認「3事例」で政府・自民が最終調整

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集団的自衛権の行使容認「3事例」で政府・自民が最終調整

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【集団的自衛権の行使容認】政府が容認する3事例_(1)日本近隣の有事=2014年4月2日現在  ≪近隣有事・機雷掃海・対米支援に限定≫

 憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の行使をめぐり、政府・自民党は4月2日、「日本近隣の有事」「機雷掃海」「対米支援」の3事例について「日本の安全に深刻な影響を及ぼす事態」に該当するとして限定的に行使を容認する方向で最終調整に入った。政府は自民党と事前調整した上で、5月に有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の報告書をまとめる方針。自民党内には必要最小限度に限る形で行使を認めることへの反対論は出ておらず、党側との調整をスムーズに進めるため、政府側が譲歩した。

 行使容認の対象とするのは(1)日本周辺の有事で米国が集団的自衛権を行使している際に、米軍への攻撃排除や攻撃国に武器供給する船舶への立ち入り検査を行う(2)機雷で封鎖されたシーレーン(海上交通路)の掃海活動(3)米国が攻撃を受け同盟国と自衛権を行使している状況下で、攻撃した国に武器供給する船舶を日本に回航する-の3ケース。

 たとえば、エネルギーの大半を輸入に頼っている日本にとって、シーレーンが機雷などで封鎖されれば、国民生活に深刻な打撃を与えるが、現在の憲法解釈では戦闘行為としてまかれている機雷を除去することは集団的自衛権の行使に当たるとしてできないことになっている。

 朝鮮半島有事での対米支援などと加え、こうした事態は現行の政府の憲法解釈で認められている「必要最小限度」の自衛権に含まれると判断し、対象を限って集団的自衛権の行使を認める。

 一方で、他国の領土での集団的自衛権の行使については、公明党などの強い反発が予想されるため原則的に見送り、行使を領海や公海に限定し容認する方向となった。

 政府が法制懇の報告時期を当初の4月から5月以降に遅らせるのも、「その後の与党協議にあまり時間をかけない」(党関係者)ためだ。自民党内の議論を法制懇の報告書に事前にできるかぎり反映させることで、スムーズな閣議決定が可能になるとみている。

 ≪党内の慎重論は収束 次は公明説得≫

 政府が自民党に配慮する形で「日本近隣の有事」などに限って集団的自衛権の行使を認める方向で調整に入ったことで、自民党内の慎重論は収束に向かう方向だ。今後は行使容認そのものに慎重姿勢を示す公明党の説得が焦点となる。

 自民党内で「限定容認論」を主導してきた高村(こうむら)正彦副総裁(72)は4月2日、記者団に「安全保障も自然災害と同じ。『想定外』は許されない。悠長にやっていいという話ではない」と慎重な議論を求める公明党を牽制(けんせい)した。

 高村氏は自民党内世論の形成に自信を深めており、1959年の砂川事件の最高裁判決について「集団的自衛権を視野に入れていない」と指摘した公明党の山口那津男(なつお)代表(61)の発言に対し「全く視野に入っていなかったとは考えられない」と公然と反論した。

 「憲法解釈変更で乗り越えるには無理がある。筋としては憲法改正で国民の判断を得ないといけない」

 党内でリベラル色が強い谷垣禎一(さだかず)法相率いる「有隣会」の2日の勉強会では、中谷元(なかたに・げん)・元防衛庁長官(56)が本来は憲法改正が望ましいとの考えを示したが、中谷氏自身は党安全保障法制整備推進本部の事務総長を務めており、憲法解釈の見直しによる必要最小限の範囲での行使容認を受け入れる考えだ。

 それでも公明党はかたくなだ。石井啓一(けいいち)政調会長(56)は2日の記者会見で、高村氏らが唱える限定容認論について「(行使容認を禁じる)政府の憲法解釈から一歩を踏み出すことになる。その点で限定するにしろ、非常に慎重な議論が必要だ」と強調した。

 11月に想定される沖縄県知事選や来年春の統一地方選を見据えれば、自民党は行使容認の決断をあまり遅らせたくないのが本音。ただ、議論を急げば、公明党の態度を硬化させかねないという思いもある。

 そんな中、山口氏は1日、行使容認反対を唱える社民党の吉田忠智(ただとも)党首(58)と国会内で会談。このことを暴露した吉田氏は2日の会見でこう語った。

 「多くの部分で(山口氏と)見解が一致したところでございます」

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