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うごめき始めた自民党「慎重派」

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うごめき始めた自民党「慎重派」

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 【安倍政権考】

 永田町がきな臭くなってきた。第2次安倍晋三内閣が2012年12月に発足してから音無の構えだった自民党だが、安倍首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認をめぐり、慎重派がジワリと台頭してきた。来年に待ち受けているのは、春の統一地方選と9月の自民党総裁選。どうにも政局のにおいが漂う。

 発火点は国対委員長

 この政治家が口火を切るとは官邸サイドも想像していなかったに違いない。

 自民党の佐藤勉(つとむ)国対委員長、61歳。温厚な性格の佐藤氏は3月25日の記者会見で、政府が「4月」を想定している有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の報告書提出の時期について、こう言い放った。

 「5月の連休明けでもいいのではないか。連休明けに出てきたとして、(自民党内や公明党との)議論が今国会中に終わるとは思えない」

 集団的自衛権の行使容認に向け、首相が目指している憲法解釈変更の閣議決定は、6月22日に会期末を迎える「今国会中」だ。その前に与党協議が行われることを考えると、佐藤氏は首相のシナリオに「ノー」を突きつけたに等しい。

 首相は今国会閉会後に内閣改造・党役員人事を断行する意向を示している。狙いは、ポストをちらつかせることによる“抵抗勢力”の封じ込め。だが、佐藤氏にはその効果は効かなかったようだ。

 佐藤氏は谷垣禎一(さだかず)法相のグループ「有隣会」に所属しており、かつて伝統的にリベラル色が強い宏池会(こうちかい、岸田派)に所属していた。政策的に首相と距離があるのは想像に難くない。くしくも、25日は集団的自衛権の行使容認に向けて議論する総裁直属の「安全保障法制整備推進本部」の設置が了承された日。そのタイミングを狙っての「確信犯」との見方は強い。

 折しも、首相はオランダ・ハーグに外遊中で国内不在だった。首相の居ぬ間に起きた「反乱」は、今国会の閣議決定を断念せざるを得ない事態に首相が追い込まれる可能性を暗示しているようでもある。

 派閥の攻防

 ただ、閣議決定を先送りした場合、関連法案の改正が秋の臨時国会に行えない事態となりかねない。4月1日からの消費税率8%が経済に与える影響は見通せず、景気腰折れとなれば、経済対策に集中せざるを得なくなることも予想される。年末に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)再改定があることに加え、首相が今国会中の閣議決定にこだわる理由はこんなところにもある。

 しかも、来年春には統一地方選が控えている。安全保障政策は選挙で票に結びつきにくく、野党の一部にある「首相は戦争のできる国に変えようとしている」というデマゴーグに世論がなびかないともかぎらない。そんな安易な考えの議員が“増殖”する可能性は否定できない。

 さらに、その先にあるのは来年9月の自民党総裁選。党内最大の首相の出身派閥、町村派(清和政策研究会)に対抗して、政界を引退した青木幹雄元参院議員会長の影響力がいまだに及ぶ額賀(ぬかが)派(平成研究会)と、同じく引退した古賀誠元幹事長を名誉会長に据える岸田派(宏池会)が手を組み、「安倍降ろし」に走る可能性もある。すでに古賀氏は「閣議決定による解釈改憲はルール違反だ」などと首相批判を繰り返している。

 思い起こされるのは、福田赳夫(たけお)首相と大平正芳(まさよし)幹事長による1978年の総裁選だ。このとき、党員による予備選が行われ、田中角栄(かくえい)元首相の全面支援を受けた大平氏が当選-。町村派が福田派、額賀派が田中派、岸田派が大平派の系譜を継いでいるのは言うまでもない。(坂井広志/SANKEI EXPRESS

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