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名護市長選 「地球儀外交」を左右

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名護市長選 「地球儀外交」を左右

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 【安倍政権考】

 安倍晋三首相(59)が信条とする「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」の基盤をなしている日米関係にきしみが生じそうな気配である。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設受け入れを最大の争点とする名護市長選が1月19日、投開票を迎える。聞くところでは、移設反対の候補が優勢とされており、そうなれば、政府が描く移設に向けた埋め立ての進展に支障が出かねない。杞憂(きゆう)に終わればいいのだが…。

 市長選に出馬したのは、いずれも無所属で、容認派の前自民党県議の新人、末松文信(ぶんしん)氏(65)=自民推薦=と、再選を目指す反対派の現職、稲嶺進氏(68)=共産、生活、社民、沖縄社大推薦=の2人。

 根強い「県外移設」論

 日米両政府が普天間返還で全面合意した1996年以降、市長選は5回目を数え、2010年の前回選挙を除けば、いずれも移設容認派が選挙戦を制している。それなのに、今回、容認派が苦戦を余儀なくされているのは、こんな理由からだろう。

 (1)末松氏は当初、容認派に担がれながらも「容認」と明言せず、元市長が出馬表明する事態を招き、その後、候補者の一本化作業に手間取った。

 (2)仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事(74)が昨年(2013年)末、埋め立てを承認したことで、反対派を勢いづかせた。承認により、反対派の気勢はそがれると読んだ政府にも誤算があった。

 (3)公明党の沖縄県本部が自主投票の方針を決め、国政上の与党である自民、公明両党による選挙協力ができない。

 (4)稲嶺氏を支持する保守勢力も少なからずおり、保守票が分散している。

 一言で言えば、「県外移設」の声は根強く、沖縄振興策などいくら小手先のさばきをしても大勢の支持を得にくい-ということに尽きる。それでも、自民党の石破茂幹事長(56)が(1月)16日、地域振興のために500億円規模の基金創設を打ち出すなど、テコ入れに躍起となっている。

 首相は、2010年の「新潮45」6月号で、当時の民主党政権が掲げた「県外移設」を批判する形で、移設問題に関して、こんな考え方を述べている。

 「普天間基地返還は米軍再編計画全体の中で決まっていることです」

 「全体の再編の中で、われわれは合意を形成してきたわけですが、(民主党政権の方針は)それを根底から覆す」

 「計画を白紙に戻したら、普天間基地も返還されず、住民への危険性も除去できず、沖縄の負担だって減りません」

 今でもいささかも変わっていないであろうことは、想像に難くない。

 首相「手順がなにより重要」

 ただ、そうはいっても、反対派が勝つことで、移設に伴う許可などの手続きが滞る懸念がある。例えば、辺野古漁港周辺に資材などを仮置きする作業場を設けるには、漁港を管理する市の許可がいるし、垂直離着陸輸送機オスプレイの運用に欠かせない燃料タンクの設置は、消防法で市長に許可権限がある。

 このため、政府内には、反対派が勝てば新法の制定で「中央突破」を図ろうとする声もある。だが、そうした手段に出れば、地元の混乱が深刻の度を増すのは明らかだ。もとより、首相には、雑な進め方をする腹はいささかもないようだ。それは「新潮45」の以下の主張を一読すれば納得できる。

 「基地は地元にとってウエルカムではないでしょう。しかし、国が安全保障上、必要だということで決めて、その上で理解を得るという手順がなによりも重要です。それが国防というものです」

 「その言やよし」と言いたい。けれども、「最悪の結果」を招いたとき、果たして見事にやってのける術はあるのか。その帰趨(きすう)は、首相が外交の基盤とする日米関係のありように色濃くにじむことになる。(松本浩史/SANKEI EXPRESS

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