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沖縄県知事、辺野古埋め立て承認 普天間移設 最初の関門は来月の名護市長選

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沖縄県知事、辺野古埋め立て承認 普天間移設 最初の関門は来月の名護市長選

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 沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事は12月27日、那覇市の知事公舎で記者会見し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請を承認したと正式に表明した。承認理由として「現段階で取り得る環境保全措置が講じられており、基準に適合している」とし、行政手続きの上で瑕疵(かし)がないことを挙げた。一方で、自らの公約である「県外移設」の主張は撤回しないと表明した。1996年の日米両政府による普天間返還合意から17年を経て、移設は実現に向け新たな局面に入った。

 安倍晋三首相は27日夕、首相官邸で記者団に「英断に感謝したい。大きな基地負担を背負う沖縄県民の負担を軽減すべく、できることは全てやらなければならない。米政府との交渉にも全力を傾ける」と述べた。菅義偉(すが・よしひで)官房長官も会見で「速やかに準備に入り工事に着手する」と表明した。

 仲井真氏は会見で、2010年の前回知事選で「県外移設」を公約に掲げたことについて、「住宅密集地にある普天間飛行場の早期の危険性除去のため、県外移設が最も早いという考えは変わらない」と強調。「(辺野古移設は)時間がかかるし、難しいのが現実だ」と指摘し、「公約を変えたつもりはない」と述べた。

 要望している普天間飛行場の5年以内の運用停止については「首相の強いリーダーシップにより、道筋が見えつつある」と期待感を示しながらも、実現には「政府は県外移設を検討する必要がある」とも付け加えた。

 また沖縄の基地負担軽減策として要請した4項目全てに安倍首相が回答を提示したことに触れ、「要望を全て受け止め、米国と交渉をまとめていく強い姿勢を示した」と改めて評価した。

 政府が沖縄振興予算を2021年度まで各年度3000億円以上とする方針を決定したことにも、「要望に沿った内容が盛り込まれた」と謝意を示した。ただ、埋め立て承認と沖縄振興策は「リンクしていない」と断言した。

 ≪普天間移設 最初の関門は来月の名護市長選≫

 普天間飛行場移設問題は仲井真(なかいま)知事の承認で一歩前進したが、今後乗り越えるべき関門がいくつも待ち構えている。

 最初の関門が来年1月19日投開票の名護市長選だ。辺野古移設「推進」に舵を切った自民党前県議、末松文信(ぶんしん)氏への一本化にこぎつけた自民党は、辺野古移設反対を唱える現職の再選を阻止し、移設実現に向けた環境を整えたい考えだ。

 末松氏の勝利には連立を組む公明党の支持が欠かせない。だが、辺野古移設容認の党本部に対し、地元の党沖縄県本部は仲井真氏に埋め立て申請を承認しないよう要求するなど「県外移設」の立場を堅持。末松氏からの推薦要請も回答を保留したままだ。

 自民党の石破(いしば)茂幹事長は12月27日の記者会見で、「普天間飛行場の危険性除去のために知事承認という結論になったことを誠心誠意、説明するしかない」と力説した。これに対し公明党の山口那津男(なつお)代表は今後の対応について記者団に「地元と相談しながら検討したい」と述べるにとどめた。

 もう一つの関門は、仲井真氏が求める普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の実現だ。4月の日米合意では、普天間飛行場の移設時期に関し、9年後の「2022年度以降」とした。具体的には、設計図作成などに1年▽本体工事5年▽機材・施設整備1年半▽米軍による認証1年▽日本政府による施設提供手続き半年-という段取りだ。

 防衛省は年明けに省内にチームを設け、工期短縮などに関する検討に着手するが、米側が難色を示すことは避けられない。

 代替施設の建設現場では反対派の妨害活動も予想される。工事の過程で名護市の行政手続きも必要で、名護市長選の結果次第で手続きが滞る恐れもある。また、移設実現を事実上の前提としている在沖縄海兵隊のグアム移転は毎年のように米議会で関連予算の承認が紛糾。工事が滞ればグアム移転への影響も避けられない。(SANKEI EXPRESS

 【基地負担軽減策をめぐる沖縄県の要望と政府の回答】

<沖縄県の要望>普天間飛行場の5年以内の運用停止、早期返還 ――→ <政府の回答>努力を十二分に行う

<沖縄県の要望>牧港(まきみなと)補給地区の7年以内の全面返還 ――→ <政府の回答>防衛省内にチームを設置し、最大限の短縮を目指す

<沖縄県の要望>日米地位協定の改定(環境調査、浄化措置など) ――→ <政府の回答>環境面について規定のない日米地位協定を補足する「新協定」の作成交渉を日米で開始する

<沖縄県の要望>オスプレイの半数程度を県外配備 ――→ <政府の回答>訓練の半分程度を本土で実施できるように防衛省内にチームを設置

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