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移設前進 あす辺野古埋め立て承認 政府、基地負担軽減策 日米で新協定交渉合意

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移設前進 あす辺野古埋め立て承認 政府、基地負担軽減策 日米で新協定交渉合意

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米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)、沖縄県名護(なご)市辺野古(へのこ)、米軍普天間飛行場の移設予定地=2013年12月25日現在  安倍晋三首相(59)は12月25日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設をめぐり仲井真弘多(ひろかず)知事(74)と官邸で会談し、仲井真氏の要請に対する基地負担軽減策を表明した。首相は米軍基地内の環境調査や浄化措置に関する新たな政府間協定の締結に向け、米側と交渉を始めることで合意したと述べ、辺野古移設に理解を求めた。仲井真氏は「驚くべき立派な内容」と応じ、27日にも政府が申請した辺野古での埋め立てを承認する。1996年の普天間返還合意から17年で日米合意の辺野古移設が大きく前進することになる。

 政府は基地での環境調査などについて日米地位協定の改定を検討したが、米側が難色を示した。菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は記者会見で「地位協定に欠ける部分を入れ込む意味では協定の改定と言ってもいい」と述べた。

 首相は普天間飛行場の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練について半分程度を本土の演習場で実施することと、牧港(まきみなと)補給地区(沖縄県浦添市)の返還を前倒しすることについて検討を進めるチームを設置することも明らかにした。

 仲井真氏が求めていた普天間飛行場の5年以内の運用停止に関しては「普天間の危険性除去が極めて重要な課題との認識は知事と共有している」として早期返還に努力する考えを伝えた。沖縄振興予算についても2021年度まで各年度3千億円以上とする振興強化策を決めたことを伝えた。仲井真氏は「首相の気持ちを胸に受け止め、承認、不承認を27日ぐらいに決めたい」と答えた。

 日米両政府は25日、新たな協定策定に向けた共同文書を発表。環境調査を目的に自治体職員が基地内へ立ち入る際の統一的な手続きを話し合うと明記した。日本側の費用負担も議題に取り上げることも確認した。

 ≪首相、空手形回避に腐心 沖縄知事「いい正月になる」≫

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた埋め立て申請で、安倍晋三首相は沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事から承認を得るため最終局面で自ら説得に乗り出した。首相が腐心したのは、仲井真氏が要請した沖縄基地負担軽減策に関する「空手形」の回避だ。普天間飛行場の「県外移設」要求という仲井真氏の公約との整合性も取れる回答を用意した。

 首相「日米交渉を開始することで合意した」

 仲井真氏「ほう」

 首相が基地負担軽減策をめぐり最初に提示したのは日米地位協定を補足する新たな政府間協定だった。交渉開始で米側と合意していることも伝えた。仲井真氏が環境条項新設による地位協定の改定を要請したことを受けたものだ。

 沖縄では返還が予定される基地での環境立ち入り調査を求める要望が強い。辺野古での埋め立てや代替施設の建設でも環境に与える負荷への懸念があり、首相は避けては通れない課題だと見定めた。

 政府は11月上旬、極秘に地位協定の改定について米側との調整に着手した。ただ、米側は日本と改定に踏み切れば韓国などと結ぶ協定も不利な条件を課されかねないと抵抗し、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)のような特別協定を締結することで折り合った。

 首相は、沖縄の要請と米側という「相手のある」交渉との間で難しい舵(かじ)とりを迫られる中、両者の妥協点を新協定に見いだした。首相周辺は「安倍政権は約束できないことは言わない」とし、空手形は切らず実効性を担保できる回答だけを示す方針を貫いたという。

 仲井真氏の要請のもう一つの柱は、普天間飛行場の5年以内の運用停止と、同飛行場の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイのうち半数の県外拠点への移転だ。

 首相はオスプレイの「訓練」の半分を本土の自衛隊演習場などで行わせる考えを示し、防衛省に検討チームを設置することも表明した。5年以内の運用停止には触れなかったものの、仲井真氏としてはそれについても「政府は検討すると説明できる」(政府高官)体裁を取った。

 別の高官は「仲井真氏は政府が辺野古移設を進めることは認めても県外要求の公約を撤回せず、政府のお手並み拝見という立場だ。かつ普天間の固定化も認めないとの担保も取った」と指摘する。

 仲井真氏は「いい正月になる」と記者団に述べ、首相官邸を後にした。(半沢尚久/SANKEI EXPRESS

 ■日米地位協定 在日米軍による施設・区域の使用を認めた日米安全保障条約6条に基づき、使用のあり方や米軍の法的地位を定めた条約。1960年に締結。問題点について「運用改善」という形で見直しを行ってきたが、環境問題は容疑者引き渡しと並び協定上の不備が指摘されてきた。

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