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国連PKO拠点に避難民2万人 南スーダン内戦危機、陸自も奮闘支援

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国連PKO拠点に避難民2万人 南スーダン内戦危機、陸自も奮闘支援

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 国連平和維持活動(PKO)の拠点は避難民であふれ返り、「キャンプ」と化していた。日本政府が12月23日、PKOで展開する国連部隊に銃弾1万発を無償で譲与する方針を決定した南スーダンは民族対立を背景とした戦闘が地方に拡大し、内戦の危機に陥った。首都ジュバの2つのPKO拠点には約2万人が身を寄せる。PKO参加中の日本の陸上自衛隊施設部隊は、給水など避難民への支援に精力を注いでいる。

 水タンク車に殺到

 ジュバの国際空港に近いPKO「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」の拠点。陸自部隊の宿営地近くに、避難民が持ち込んだテントやベッドがいくつも並ぶ。道端に物を並べて売る人の姿も。避難民の往来が多く、陸自の車両もゆっくりとしか進めない。

 ジュバ市内では今月(12月)15日から戦闘が数日続き、数百人が死亡。最大民族ディンカと2番目に多い民族ヌエルの対立から、市民殺害や略奪も起きた。PKO拠点に逃れた人々にはヌエルが多いようだ。

 「水、食料、何もかもが足りない。この(敷地の)外は安全ではないし…」。ヌエルの男性避難民、マイケル・ガトルアックさん(28)が先行きへの不安を口にする。

 陸自部隊は戦闘発生後、本来の任務である道路などのインフラ整備をいったん停止し、駆け込んだ避難民への給水活動を始めた。

 陸自の水タンク車が出動すると、ポリタンクを持った人々が争うようにして殺到。つかみ合いのけんかを始める女性たちもいた。

 「隊員に危険及ばず」

 陸自部隊は避難民用の簡易トイレも拠点内に多数設置。医療支援として陸自宿営地の入り口に仮設テントを設け、毎日100人前後に診察や簡単な治療を行っている。

 ディンカのキール大統領が執務するジュバの大統領府周辺には、多くの国軍兵士の姿が見られる。ただ、市内では営業をやめた店も多く、戦闘前に比べ人けははるかに少ない。

 日本人を含む外国人の多くは空路で国外に脱出。隣国ケニアに脱出した国連機関の関係者は「一般の人々は新たな戦闘を恐れ、ジュバ郊外にも逃れているそうだ」と指摘した。

 陸自部隊代表の井川賢一1等陸佐(45)は「(戦闘発生後)隊員が危険にさらされたことはなかった」とし、現在のジュバの治安は安定していると指摘。避難民支援は「南スーダンの方々のためになると信じている」と強調し、混乱が収束するまで続けると話した。(ジュバ 共同/SANKEI EXPRESS

 ≪人道・緊急性考慮 韓国軍に銃弾1万発提供≫

 政府は12月23日、武装勢力の襲撃で治安が悪化している南スーダンで、国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊から、小銃の5.56ミリ弾薬1万発を、国連を通じて現地の韓国軍に提供することを決めた。国連と韓国からの要請を受けたもので、政府は韓国部隊や、その宿営地に身を寄せる避難民の安全確保のため「緊急性・人道性が高い」と判断し、PKO協力法に基づく物資協力の一環として応じることにした。自衛隊の銃弾が他国に提供されるのは初めて。

 国連と韓国から「防護のための弾薬が不足している」との要請が22日にあった。これを受け、安倍晋三首相は23日、国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合と9大臣会合を招集して対応を協議し、持ち回り閣議で提供を決定した。さらに、菅義偉(すが・よしひで)官房長官による談話を発表し、提供を武器輸出三原則などの例外と位置付ける方針だ。

 PKO協力法は、PKOや国際救援活動などで「適当と認めるときは、物資協力を行うことができる」としており、提供物資に弾薬が含まれるかの規定はない。政府は提供理由として(1)現地で韓国軍と同型の弾薬は自衛隊しか保有していない(2)隊員や避難民の安全確保のため一刻を争う-としている。弾薬は十分な備蓄があり、自衛隊の活動に影響はないという。

 南スーダンでは国連南スーダン派遣団(UNMISS)が治安維持や施設整備などの活動を実施。陸自は首都ジュバに施設部隊約350人、韓国軍は東部ジョングレイ州に約280人を派遣している。

 ジョングレイ州では、武装勢力の襲撃でインド軍の2人が死亡したり、米軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが狙撃されて4人が負傷したりするなど、治安悪化が目立っている。(SANKEI EXPRESS

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