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南スーダン PKO施設襲撃、要員3人死亡 独立から2年半 くすぶる権力闘争

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南スーダン PKO施設襲撃、要員3人死亡 独立から2年半 くすぶる権力闘争

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 来年1月で独立から2年半を迎えるアフリカ・南スーダンが政情不安に陥っている。現地からの報道によると、東部ジョングレイ州で12月19日、平和維持活動(PKO)部隊が武装勢力に襲撃され、インドから派遣されたPKO要員3人が死亡した。首都ジュバでは(12月)15日夜以降、サルバ・キール大統領(62)率いるスーダン人民解放軍(SPLA)主流派と7月に解任されたリヤク・マシャール前副大統領(60)を支持する兵士らの間で武力衝突が断続的に発生しており、国連のナバネセム・ピレイ人権高等弁務官(72)は19日、民族対立の激化に深刻な懸念を表明した。

 PKO部隊への襲撃は、ジョングレイ州アコボにある国連南スーダン派遣団(UNMISS)施設で起きた。施設には当時、保護を求めて住民30人以上が集まっていたという。襲撃した武装勢力は、スーダン最大民族のディンカ人のキール大統領に解任されたマシャール前副大統領側のヌエル人の若者らとみられ、ディンカ人を標的にした攻撃の可能性が高いという。

 ジョングレイ州では18日夜、前副大統領を支持する兵士らが州都ボルを制圧。南東部トリットなどの都市にも衝突が拡大している。国連当局者は、(12月)17日に行われた南スーダン情勢に関する安全保障理事会の緊急会合で、400~500人が死亡、約800人が負傷したとの情報があると報告した。国連外交筋によると、1万5000~2万人が避難民となっている恐れがあるという。

 国連のエリアソン副事務総長は19日の記者会見で、「暴力はさらに広がる恐れがある」と警告。ピレイ人権高等弁務官も、多数の市民が犠牲になっていることに懸念を示すとともに、民族対立感情などに基づく報復攻撃をやめるよう両派に訴えた。

 バラク・オバマ大統領(52)は19日、「最近の戦闘は南スーダンを過去の暗い日々へ後戻りさせる兆候だ」とする声明を発表。南スーダンの指導者らに対して、「今こそ平和と統一と人々のより良い未来のための取り組みを再確認するときだ」などとして、即時の停戦を呼びかけた。また、オバマ氏は19日、南スーダンにいる米国民や大使館の安全確保の支援のため、米兵45人を派遣したと議会に通知した。米兵は南スーダン情勢が安定するまでとどまる。

 ジュバにはPKOで派遣されている陸上自衛隊員約350人のほか、約110人の日本人が滞在しているが、日本人が被害に遭ったとの情報はない。(カイロ 大内清、ニューヨーク 黒沢潤/SANKEI EXPRESS

 ≪独立から2年半 くすぶる権力闘争≫

 南スーダンは2011年7月にスーダンから独立した「世界で一番新しい国」で、人口は約1031万人(11年時点)。キリスト教徒が多く、国の大きさは日本の約1.7倍、石油や農業が主要産業だ。

 独立前の旧スーダンは、北部のアラブ系イスラム教徒主導の中央政府が、全土にイスラム法を導入したことをきっかけに1983年に内戦が再燃し、2005年の包括和平合意(CPA)まで200万人以上の犠牲者を出した。その後、CPAに基づき11年1月の住民投票で現在の南スーダンの独立が決まった。

 独立後の南スーダンは、SPLA主流派のディンカ人であるキール氏が大統領に、ヌエル人のマシャール氏が副大統領に就任し、権力の均衡を図ってきた。しかし、キール氏は今年7月、マシャール氏を解任。これに対してマシャール氏は大統領の座に野心を示すなど、両者の対立がさらに強まった。

 キール氏は、マシャール氏らが反発して「クーデター未遂」を起こしたと糾弾している。

 SPLAや、その上部組織の与党「スーダン人民解放運動」(SPLM)には、独自の言語や文化を持つ数十の黒人系民族が参加しているとされる。

 南スーダンの石油産出量は、旧スーダン全体の約8割を占め、独立当初は原油収入への期待は大きかった。しかし、スーダンのパイプラインを経由しないと石油を輸出できない。

 このため、両国はパイプライン使用料で対立し、昨年3月には武力衝突に至った。両国は境界付近の油田地帯の帰属も争っており、関係が一向に改善しない中、南スーダンの経済は低迷したままだ。

 南北スーダン問題に詳しいエジプト人研究者は、統治基盤が脆弱(ぜいじゃく)な南スーダンは「建国の大義とキール氏の指導力でかろうじてまとまっていただけだ」と指摘。今後も民族間の権力闘争はくすぶり続けるとの見方を示している。

 このまま戦闘が拡大すれば、情勢はさらに悪化し、再び内戦に逆戻りする可能性もある。(SANKEI EXPRESS

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