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ジャマイカ独立52年 カリブの海が紡ぐ新たな歴史

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ジャマイカ独立52年 カリブの海が紡ぐ新たな歴史

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オーチョリナスの「Jamaica_Inn」は、かつてマリリン・モンローがハネムーンで滞在したこともある老舗の高級リゾート。ルームサービスを給仕中のマーティン=ジャマイカ(かくたみほさん撮影)  きめ細かいホワイトサンドに、まるで宝石そのもののように輝くエメラルドグリーンの海。雲一つない空を見上げれば、強烈に燃える太陽。「カクテルはいかがですか?」 バーテンダーからランの花を挿したグラスを受け取ると、甘い香りがふわりと漂う。たちまち「楽園」の時間が訪れた。

 ジャマイカのビーチリゾートに来ている。日本ではなじみが薄いが、ここは毎年人口と同じほどの観光客が訪れる観光大国。1960年代からホテルが急増し、今や世界有数の高級リゾート地として知られる。究極のぜいたくステイを求め、ハネムーン客はもちろん、ハリウッドスターやロイヤルファミリーなど、ゲストにはVIPも多い。

 宿泊客は通常、プライベートビーチやスパ、テニスコートなどさまざまな施設が併設されたホテルの中で自由気ままに過ごす。3度の食事に24時間対応のルームサービス、それに多様なアクティビティーがすべて料金に含まれる「オールインクルーシブ」プランも、ジャマイカンステイのハイライトとしてすっかり定着している。

 長らく英国の植民地だったジャマイカが独立し、今年で52年。国の経済を支える一大産業である観光シーンは、新たな局面を迎えようとしている。巨大なクルーズ船が停泊し、大小のビーチリゾートが立ち並ぶ、北側の海岸沿いを巡った。

 ≪ルーツは違えど「楽園」に境界線なし≫

 ジャマイカという国はそもそも、15世紀以降欧米からやってきた入植者と、アフリカから連行された黒人奴隷の歴史の上に成り立っている。入植者は、さとうきびやコーヒー畑で奴隷を働かせ、集めた農作物で富を得てきた。そんな奴隷制度が廃止されたのは1807年のこと。1962年には、長らく植民地化されていた英国からの独立も果たした。かつての入植者と奴隷は今、宿泊ゲストと従業員という異なる関係で、新しい文化を築いている。

 オーチョリナスの老舗リゾート「Jamaica Inn」は、各国のロイヤルファミリーが訪れる高級ホテルでありながら、スタッフとゲストがオープンに打ち解けていて意外な印象を受ける。

 「リピーターになるゲストが多いし、スタッフも長く勤める人が大半。信頼関係が家庭のような居心地の良さにつながっているのかも」。勤続9年というウエーターのマーティンは、優しい笑顔を見せる。

 所変わって、島の西端にあるネグリルは70年代にはヒッピーの聖地として栄えた町。すべての人に開放された長い「7マイルビーチ」を通じてツーリストとローカルが融合し、独自の文化が生まれていた。

 30年前に移住し、今ではホテルを運営しているという元ヒッピー男性に出会う。彼が目指すのは地域密着型のリゾートステイだという。

 「小国で自給率が低いため、食材の多くはマイアミからの空輸頼み。観光客が独自の食文化に触れるのは難しい。だから僕のホテルでは、調理用バナナやキャッサバなど地元野菜を使った伝統料理を出すことに。近年成功しつつある無農薬栽培は、生野菜が貴重なこの地で、たちまち人気メニューになりました」

 時間をかけ成熟したジャマイカのビーチリゾート。観光産業は、暗い過去を乗り越えたこの国の未来を築く、大きな希望でもある。(文:雑誌「TRANSIT」 池尾優/撮影:フォトグラファー かくたみほ/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 「TRANSIT」は、世界中のさまざまな風景と、ファッション・食・音楽などのカルチャーを、“旅”というフィルターを通して紹介する雑誌です。現地取材に基づく美しい写真とリアルな文章で旅先の空気感をお届けします。SANKEI EXPRESSでは「TRANSIT」の特集の一部をご紹介します。

 ■雑誌「TRANSIT」 24号

<特集>美しきカリブの海へ キューバ&ジャマイカ。<発行>euphoria FACTORY。<発売>講談社 1800円(税込)

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