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【にほんものづくり物語】十勝川温泉

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【にほんものづくり物語】十勝川温泉

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 ≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫

 日本人にはなじみの深い温泉。全国に数千あるという温泉地を一番多く有する地域は北海道と言われます。湯治やリラクゼーションだけでなく、最近では「美肌の湯」を求めて旅するファンも増えているようです。今回はその中でも、ちょっと耳に新しい「モール温泉」に注目。その特長を生かし、地域活性を目指している北海道音更町の十勝川温泉旅館協同組合に鬼塚英喜さんを訪ねました。

 モール温泉の語源は湿原を表すドイツ語。湿原の植物や樹木が堆積してできる泥炭は、地中の高温高圧で石炭に変化していきます。その途上の泥炭層から、じっくりと湧き出る源泉がモール温泉です。最近注目されているフミン酸をはじめ、植物性の有機物を多く含み、しっとりとした肌ざわりと琥珀(こはく)色の湯が特長です。

 数百万年前、十勝平野は大きな内湾で、周辺には湿原が存在し、泥炭が堆積していました。温泉の記録は明治初期の文献「北海道地誌要領」にありますが、当時はアシの生い茂る湿地帯の小さな沼に、ぬるいお湯が湧き出し、先住のアイヌの人々は「薬の湯」として語り伝えていたようです。

 1900(明治33)年に開湯し、やがて温泉地として旅館が立ち並び始めました。昭和の初期には世界で2カ所しかないモール温泉の一つといわれていましたが、その後、各地で発見され認知度も高まっていったようです。

 北海道は訪れる観光客も多く、自然・文化・産業など見どころもたくさんあります。その中から「北海道ならではの価値を掘り起こし、観光などへ活用することによって、それらの価値をさらに高め、将来へつなげていくこと」を目的に選定されるのが「北海道遺産」です。現在52件が登録され、モール温泉も北国らしい希少な温泉資源として2004(平成16)年に選定を受けました。

 この素晴らしい財産を未来につなぐためにと動き出したのが、十勝川温泉旅館協同組合です。PRの一環として、温泉の肌効果をお土産ものにと美容マスクを発売。それがきっかけとなり、化粧品メーカーと、地元出身で子供のころから温泉効果を研究したかったという、先生の在職する大学機関との産業連携共同研究が始まりました。道内他の地域や本州の各地に比べ、十勝川モール温泉が、培養皮膚に対し保水性を高めるヒアルロン酸産生効果があることがわかり、現在も北海道遺産協議会の助成を受け研究は続けられています。

 売れ行き絶好調の温泉成分配合化粧品。その秘密は、高い保湿効果の温泉水をそのままフリーズドライして配合していること。科学的な根拠はもちろんのことですが、何より地元の方々がモニターとなり開発にも関わるという、熱い思いが活力となっています。

 「大自然とモール温泉の効果、人と人をつなぐ温泉の素晴らしさを、この土地にほれ込んだ屯田兵として、一人でも多くの人に伝えていきたい」。鬼塚事務局長は、日本中に十勝の良さを発信すべく意欲的に仕事に取り組んでいます。

 日本人の大好きな温泉。自然と科学の融合と、世代や地域を超えた交わりの中から、新しいものづくりの形が見えてくるように思えます。(SANKEI EXPRESS

 【肌もち】

ゆるりときりり十勝川温泉

入浴用化粧品/30グラム×3包

美容液パック/20ミリリットル×3枚 2800円(税抜)。株式会社グランデュール 問い合わせ先 (電)045・847・1683 www.grandeur-gd.co.jp

 【十勝川温泉化粧品】

ハンドクリーム:50グラム 1000円(税抜)。全身ジェル: 150ミリリットル 1500円(税抜)。ミストスプレー:100ミリリットル 1200円(税抜)。温泉マスク:20ミリリットル3枚 1200円(税抜)。十勝川温泉旅館協同組合 問い合わせ先 (電)0155・46・2447

 ■鬼塚英喜 十勝川温泉旅館協同組合事務局長。長崎県生まれ。1976(昭和51)年、陸上自衛隊に入り、北海道で38年間勤務。十勝川いかだ川下りでモール温泉と初めて出合う。アウトドアが大好きで大自然と温泉にほれ込み、十勝に移り住む。十勝の良さを十勝川温泉から発信するという、十勝川温泉旅館協同組合事務局に勤務していた先輩の熱い思いを引き継ぎ、今年2月、事務局長に就任。問い合わせ先:十勝川温泉旅館協同組合事務局 〒080-0262 北海道河東郡音更町十勝川温泉北15丁目1番地 (電)0155・46・2447

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