≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
日本人にはなじみの深い温泉。全国に数千あるという温泉地を一番多く有する地域は北海道と言われます。湯治やリラクゼーションだけでなく、最近では「美肌の湯」を求めて旅するファンも増えているようです。今回はその中でも、ちょっと耳に新しい「モール温泉」に注目。その特長を生かし、地域活性を目指している北海道音更町の十勝川温泉旅館協同組合に鬼塚英喜さんを訪ねました。
モール温泉の語源は湿原を表すドイツ語。湿原の植物や樹木が堆積してできる泥炭は、地中の高温高圧で石炭に変化していきます。その途上の泥炭層から、じっくりと湧き出る源泉がモール温泉です。最近注目されているフミン酸をはじめ、植物性の有機物を多く含み、しっとりとした肌ざわりと琥珀(こはく)色の湯が特長です。
数百万年前、十勝平野は大きな内湾で、周辺には湿原が存在し、泥炭が堆積していました。温泉の記録は明治初期の文献「北海道地誌要領」にありますが、当時はアシの生い茂る湿地帯の小さな沼に、ぬるいお湯が湧き出し、先住のアイヌの人々は「薬の湯」として語り伝えていたようです。