TPP首脳会合では協定消滅の回避へ全力を挙げることで一致したものの、参加国間の足並みは乱れている。会合では議題にならなかった「米国抜き」の発効を探る動きが強まっているためだ。日本は各国が早期に批准することでTPP脱退を掲げたドナルド・トランプ米次期大統領が翻意しやすい環境を整えたい構えだが、主導権を発揮できなければTPPは“空中分解”する恐れがある。
TPP参加国は米国が主導することを望んでいるが、米国抜きでのTPPも検討する用意がある-。
ロイター通信によると、米通商代表部(USTR)のフロマン代表は、ペルーのリマで開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で各国がこうした見解を明らかにしたと述べた。
メキシコのグアハルド経済相も「米国の承認がなければ発効できない規定の変更を協議する必要がある」と述べており、米国抜きの発言が相次いでいる。
一方、経済産業省幹部は「米国抜きのTPPは成り立たない」と断言する。TPPは関税の撤廃率や貿易・投資ルールで高いレベルの自由化を盛り込み、アジア太平洋地域で新たな経済秩序を作る協定だ。
中南米や東南アジアなどの参加国は、全体の約6割を占める米国市場との貿易拡大を見込んで国内の反対を押さえ込んだ。日本も米国向け自動車部品関税の即時撤廃などと引き替えに、野菜や果物など農産品の関税撤廃を受け入れた。仮に発効規定だけを書き換え、他の合意内容を残して11カ国で成立を図っても、国内承認を得るのは難しそうだ。