財務省と国税庁が、脱税調査の手続きなどを定めた国税犯則取締法(国犯法)の大幅改正に乗り出す。国税査察官は「日没」以降は強制調査に着手してはいけないといった、実態にそぐわない項目を見直し、利用が増えているメールなどの電子データの押収をしやすくして、時代に合った内容にする。「マルサ」の名で知られる国税局査察部の強制調査は朝に入るケースが多いとされるが、これからは夜も増えるのか-。
100年以上前の明治33(1900)年に制定された国犯法は、日没より日の出までは強制調査に入ってはいけないと定められている。
故・伊丹十三監督の映画「マルサの女」をはじめ、国税査察官が映画やドラマに登場するケースは少なくない。財務省関係者は「前段階の内偵なら夜にやってもいいが、(映画などでも)強制調査は夜に入ってはいないのではないか」と指摘する。実際の査察官の調査は朝に入ることが多いという。
査察官の強制調査は裁判所の許可を得て行われ、日没より前に調査に入っていれば夜まで継続しても問題ない。だが、調査の途中で新たに捜索が必要な場所が見つかった場合、改めて裁判所の許可をもらおうとしても日没までに間に合わなければ、翌日に持ち越さざるを得ないケースがあった。
関税法などに同様の規定はなく、「国犯法にだけ残っていた経緯はわからない」(担当者)。しかし、調査が遅れることで、被疑者が脱税の証拠隠滅などを行う恐れがある。このため、日没後の夜にも調査に入れるよう改正する方針だ。