不動産市場が加熱する中で、工業生産能力は14年までの7年間で粗鋼約2倍、自動車2・3倍、セメント1・9倍と急膨張し、いずれも世界ダントツのモンスターとなった。14年に不動産バブルが崩壊すると、地方各地ではゴーストタウンが出現、鉄鋼などの設備の5割以上が過剰となった。中国需要の急減で石油、鉄鉱石など国際商品市況は暴落し、世界にデフレ不況圧力を加えている。
通常の市場経済であれば、バブル崩壊は資産や生産両面の過剰を整理する動因となるのだが、中国共産党はそうはさせない。決め手は人民元の相場をドルにくぎ付けする「管理変動相場制」だ。通貨価値安定を背景に、家計は株や不動産相場が下落しても、現預金を増やし続ける。そして銀行は不動産や企業への融資を増やす。いったん崩落したはずの不動産市況は昨年前半から上海、北京、深センなどの沿海部の巨大都市で急速に回復し始めた。
製鉄所などゾンビと化したはずの工場も倒産を免れている。地方の党官僚は党中央が目標とする経済成長率7%前後の達成を迫られる。やり方は簡単だ。GDPの4割以上を占める固定資産投資を増やせばよい。銀行が融資を増やせば、カネは回りに回って不動産需要が盛り上がり、不動産開発によってGDPを押し上げるという仕掛けだが、成果はどうか。