実際、被災した熊本、大分両県内では、訪日客に人気の温泉地なども大きな被害を受けた。熊本空港はターミナルビルが損壊。海外の旅行サイトで人気ランキング上位の由布院温泉(大分県)も地震発生後、観光客が引き揚げた。海外の旅行会社では「九州行きの旅行で大量のキャンセルが発生している」(田村長官)という。
復旧に手間取れば、風評被害の拡大も懸念される。11年の東日本大震災では、被災3県(岩手、宮城、福島)の外国人宿泊者数が、前年の3分の1未満の水準まで激減。15年でも震災前水準に届いていない。韓国などからの訪日客は東北から足が遠のいたままで、九州でも同じような影響が起きる恐れがある。
東洋大学の島川崇教授(国際観光学)は「東日本では拙速な対応が政府情報の信頼を落とし、風評を長引かせる結果になった」と警鐘を鳴らす。政府は今後、訪日客を呼び込む「攻め」の施策に加え、日本離れに対し「守り」を強化していく、“二正面作戦”を余儀なくされそうだ。(佐久間修志)