韓国の労使対立が泥沼化の気配だ。働く能力が著しく低い社員を企業が解雇できる指針を政府が出したことに、労働組合側が激しく反発している。不興をかってでも、労働市場改革に乗り出す朴槿恵政権。深刻な若者の失業問題の改善を狙った施策だが、雇用不安をあおる皮肉な事態を生んでいる…。
2つの指針に大騒ぎ
韓国政府が1月22日に発表した労働改革の2つの指針に衝撃が走った。なにしろ、会社が従業員の働きの悪さを理由にくびを切ったり、賃金が頭打ちになったりすることにつながる「改革」だったからだ。
従来、経営危機下での人員整理や不祥事による懲戒で認められていた解雇だが、人事評価で業務能力が著しく低いと判断され、教育訓練をしても改善しないような労働者を指針にそって、解雇可能な仕組みになった。
さらに労働組合が協議を拒否した場合であっても、「社会通念上の合理性」によって、就業規則を変更できることが認められた。雇用を守る代わりに一定年齢から賃金を下げる「賃金ピーク制」の導入を後押ししたい政府の思惑がある。