韓国国会は2016年の国防予算を前年比3・6%増の38兆7995億ウォン(約4兆円)とする案を可決した。人口がほぼ倍の日本の防衛費(約5兆円)に比べてもかなりの高水準で、韓国の予算全体(約386兆ウォン)の約10%にあたる。しかし内実は火の車で、国防の要の徴兵制が致命傷となり「マネー」が消えていく悪循環に陥っている。新鋭軍艦の救命胴衣に粗悪な不良品が使われるなどの不正もマイナスに作用し、軍も経済も危険水域にある。(岡田敏彦)
今も戦争中
韓国の予算は12月3日に国会で可決した。うち国防費は前年比3・6%増とはいえ、軍が優先事項に掲げる新型戦闘機の開発予算は増額要求が却下され、わずか670億ウォン(約69億円)と絶望的な額に抑えられた。韓国の国防予算で最も重きを成すのは実は人件費で、その多くが徴兵制に起因する出費に充てられるのだ。
韓国はいまだ北朝鮮と休戦中で、いつ戦争が再開されるかわからない状態にある。北朝鮮とは地続きのため、特に陸軍に膨大な人員が必要となるが、志願制では人員を充足できないため徴兵制度で補っている。徴兵期間は21~24カ月で、国籍を有する男性は18歳までに検査を受け、19歳から30歳までの間に入隊しなければならない。入隊すれば最下級の2等兵からスタートし、厳しい訓練が待っている。