韓国の政策当局によると、TPP発行から10年間、韓国がTPPに参加しなければ、国内総生産は0・12%減少する一方、逆に参加すれば1・8%程度押し上げられる。自動車関連や電子製品部品など韓国の主力産業が、日本との競争で劣勢に立ち、経済力の低下につながるとの警戒感も強い。
中国とのFTAに「精魂」
TPPが推進されれば、こうした問題が顕在化するのは以前から韓国でも知られていたことだ。それでもなぜ、交渉を尻込みしたのか。そこには通商交渉に対する韓国の誤算もうかがえる。
韓国は、巨大経済圏の貿易協定よりも、2国間の自由貿易協定(FTA)を優先する通商外交を展開してきた。2国間の協定は、交渉相手が少なく、多国間に比べて、妥結に持ち込みやすいとされる。利害が対立する条件は、棚上げしやすく、そもそも組みたい相手を選ぶことができる。
2国間の交渉のメリットを享受するように韓国は、米国や欧州連合(EU)を含む11のFTAを発効し、中国を含む4カ国とも交渉を締結。これにより、「もはや、TPP参加への必要性は乏しい」との認識が広がった。