梅丈岳(ばいじょうだけ)山頂の展望台から、三方(みかた)五湖を望む。見事なコントラストだ。5つある湖は水路でつながっているが、若狭湾から注ぐ海水の塩分濃度は海から離れるにしたがって徐々に変化。それぞれの水面は5種類の青に輝いて見えた。
五湖のうち最大の「水月湖」は、地球の歴史を知る上でとても重要な湖として世界から注目されている。
「年縞(ねんこう)」という言葉をご存じだろうか。湖の底には、長い年月をかけて土などが堆積し、しま模様の層が形成される。「地層の年輪」ともいわれるこの年縞は古代の謎を解く鍵だとして、世界中でサンプルの採取が進められ、研究が重ねられてきた。そしてわかったのが、考古学や地質学における最も重要な手がかりとなるサンプルが水月湖の底に眠っていること。
地形や周辺環境など年縞が形成される条件が奇跡に近い形で整い、ここで採取された年縞から、現在までに過去7万年の地球の自然や環境の変動が具体的に解析された。水月湖は世界中の研究者のあいだで「奇跡の地層を持つ湖」と呼ばれている。
私たちはその後、山頂からレインボーラインを下って熊川宿を目指した。途中、天徳寺の境内奥にある「瓜割(うりわり)の滝」に寄ってみる。