吐息が白くなり始めた晩秋の早朝、寺の境内をくまなく掃除する修行僧たちに交じって、あちらこちらに猫の姿が…。通称「猫寺」として知られる福井県越前市の曹洞宗の禅寺「御誕生寺(ごたんじょうじ)」の毎朝の光景だ。
2002(平成14)年に現在地に建立された御誕生寺が、一体なぜ「猫寺」と呼ばれるようになったのか? 猪苗代昭順(しょうじゅん)副住職(41)によると、寺の建立工事中に、段ボール箱に入れられた4匹の子猫が境内に捨てられていたのが始まりだという。
その後も捨て猫が後を絶たず、面倒をみているうちに猫はどんどん増えていき、餌代や治療費がかさむようになった。そこで寺では副住職のアイデアで、SNSなどを駆使して、全国の猫ファンに向け「猫を捨てないで」というメッセージを発信し、猫の世話にかかる費用の寄付を呼びかけた。
これが大きな効果を発揮し、国内各地はもちろん、海外からも猫に会いたいという参拝者が急増したという。
フェイスブックのフォロワーは6000人を超え「こんな田舎の、何もない寺に…有り難い事です」。副住職の口からは感謝の言葉があふれる。