その言葉通り、人民元をわずかな幅で変動するようにしたのは2005年になってからだが、周氏は人民元改革の担い手として、ワシントンから一目も二目も置かれてきた。胡錦濤前政権時代には「米国に近すぎる」と周りから警戒されるほどだったが、習近平総書記・国家主席は13年に人民銀行総裁3期目の続投を承認した。同総裁として03年に就任して以来、現在まで12年という異例の長さである。習総書記はワシントン人脈とすぐに打ち解ける周氏に特別のミッション「人民元の国際化」を託したのだ。
周総裁は4月18日、ワシントンで開かれたIMF関連の国際通貨金融委員会(IMFC)への出席にあわせて声明を発表した。IMFの準備資産SDR(特別引き出し権)を構成する通貨に「人民元が新たに含まれるかどうかが大きな問題だ」とし、人民元のSDR採用を各国代表に働きかけた。
3月22日、ちょうど世界各国が相次いでAIIB参加を表明している最中に、周総裁は訪中したラガルドIMF専務理事に会って、人民元のSDR通貨化で熱弁を振るった。翌日、李克強首相はラガルド氏と北京で会談し、SDRの構成通貨に人民元を採用するよう申し入れた。首相は人民元による資本取引への取り組みを加速し、国内個人の海外投資や外国の機関投資家の中国資本市場への投資を支援する仕組みをさらに整えると訴えた。ワシントンでの周声明はSDR通貨採用でIMF加盟国への多数派工作を意味する。