韓国政府が3月27日、中国主導のアジアインフラ投資銀行への参加を決めたと発表した。先に米国の制止を振り切って英国などの欧州諸国やオーストラリアなど他の米国の同盟国も参加しているのだから、ワシントンも「各国の判断にまかせる」と言わざるをえなくなった。韓国メディアは「韓国企業がアジア地域のインフラ開発事業に参加する機会が大きく開かれた」(中央日報電子版3月30日付)とおおはしゃぎである。韓国はとにかく実利を優先したのだが、彼らにとって真っ先に考える実利先はアジア一般という漠然とした地域概念であるはずがない。北朝鮮であろう。
切られた「北朝鮮カード」
これまで韓国のAIIB参加をめぐる米中の暗闘はすさまじかった。
2014年5月に訪韓した中国の王毅外相は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し、7月初旬の習近平国家主席の訪韓時の中韓共同宣言文に『韓国がAIIBに加盟することにした』と明示してほしいと要求してきた。さらに北京は6月初旬に訪中した韓国の副首相に念を押した。これに対し、米側は危機感を強め、「韓国がAIIBに参加するなら、米韓の信頼関係を壊す」とまで警告した。米国の強硬姿勢を受けて、朴氏も習氏との会談で「参加します」とは約束できなかった。以来、水面下で中韓間のすり合わせが行われてきた。