車1台がやっと通れるような狭い石畳の路地を進むと、「聖フランシスコ大聖堂」がそびえ立っていた。聖フランシスコを記念するため、その死後である1228年に建立された。聖堂には聖フランシスコの墓も設けられている。
「現法王になってから、“観光シーズン”がなくなった」。聖堂内のある守衛がこぼすのも無理はない。10月初旬だが、聖堂内には多くの観光客らが訪れており、「訪問客が最も多い夏場と変わらない」という。法王の人気とともに、名前の由来となった聖フランシスコへの関心も改めて高まっているようだ。
28枚のフレスコ画
聖フランシスコは裕福な商人の息子として生まれ、放蕩(ほうとう)生活を送っていたが、回心し、財産を捨てて信仰活動に入った。清貧を説く修道会「フランシスコ会」を立ち上げたことでも知られる。聖堂内でひときわ多くの訪問客が集まっていたのは、そんな生涯を描いた28枚のフレスコ画のある上層階だ。
脱いだ着衣を父に返して、世俗世界からの別れを誓った場面や、イスラム教徒に福音を伝えるため、イスラム世界の支配者スルタンに面会する場面など、フレスコ画からは、その生涯が生き生きと伝わってくる。有名な「小鳥に説教する聖フランシスコ」からは、神の創造物としての自然を愛する思いがうかがえる。