巡視船より格段に、係争相手国が手出しし難い対象がクルーズ船だ。中国は複数の岩礁を埋め立て滑走路などを矢継ぎ早に造成、基地化を進めているが、この種のヒトラー流サラミ戦術に比べても国際を刺激しない。標的の島嶼・礁・砂州を「定期巡回」し、上陸後は衣食住を提供する船=移動基地に戻ればよい。2013年のクルーズ開始時、中国に厳重抗議したベトナムの国営メディアは「係争海域における度重なる一方的挑発行為の最新型」と形容している。
新たな侵略の先兵
確かにクルーズ船は、中国流サラミ戦術要素として「最新型」だが、戦術自体は1954年、中印国境=カシミール地方の高原奪取でも使われた。中国人を牧草地に段階的に入植させ、徐々にインド人牧場主を駆逐。10年近く繰り返し、九州並みの広さを持つ高原を掠め取った。
まともな国は国内外の法律・慣習や歴史によって《地理的国境》を定める。ところが、中国の場合、欲しい所が領域となる。《戦略的国境》と呼ばれる独善的概念で軍事・経済力が拡大する限り、戦略的国境も膨張し続ける。ヒトラーが唱えた《東方生存権》の“理屈”と同じではないか。いわく-