中国の運航会社が最南端都市・海南省三亜市と、ベトナムや台湾も領有権を主張する南シナ海パラセル(西沙)諸島を結ぶ“新観光航路”を開いた9月、直毛でチョビ髭を蓄えた男がサラミを切って食べている夢を見た。男はナチス・ドイツ総統のアドルフ・ヒトラー(1889~1945年)だったが、傍らで中国の習近平国家主席(61)がしきりにうなずいてる。不快な組み合わせに目覚めたものの、うなずきの背景はかすんでいた。新旧独裁者による悪夢の共演の意味は、小笠原/伊豆諸島海域で「中国漁船の大艦隊」が赤サンゴを密漁した10月に入り判然とした。習氏はヒトラーに、少しずつ現状を切り崩し、既成事実の積み重ねで戦略環境を有利に導く《サラミ・スライス戦術》を学んでいたのだ。観光クルーズも密漁も今後反復され、中国は次第に勢力圏を拡大させていく。サラミ戦術の先兵=クルーズと密漁に対抗せよ。
9月に「新航路」開設
運航会社によれば9月2日、“処女航海”に出たのは9683トンの貨客船。船内で3泊4日を過ごし、パラセル南西部の0.01~0.02平方キロしかない幾つかの砂州を訪れ、ビーチバレーや釣り、記念撮影を行った。