白いサンゴの砂浜が続く、島でもっとも美しいビーチのある実久集落へ。実久三次郎神社でお参りをすませ、境内の縁起に目を通したら、何と神社の名前にある「三次郎」は、僕の大好きな源為朝(みなもとのためとも)の子息だった。
巨漢で荒くれ者、源氏の最終兵器といわれた為朝は、伊豆大島で切腹したとされるが、一説によると船の上手な使い手として琉球に逃れ、琉球王国の始祖になった。その途中、実久に立ちより集落の女性と恋に落ち、生まれた子供が三次郎なのだという。平家と源氏、あれほど熾烈(しれつ)な闘いを続けた敵同士が、同じ島に滞在して島の人々と交流していたなんて、ほほえましささえ感じてしまう。
西阿室集落にも足を運んだ。ノロが天上神を祀るアシャゲ、グリヤマと呼ばれる聖域があり、マリア観音、神仏習合の秋葉大権現などが祀られている。別の時空を生きる神々が共存しており、民俗学的な興味が尽きない。どの集落でも、海辺に屹立(きつりつ)した岩々を立神(たちがみ)と呼んで崇め、沖に浮かぶ無人島は神々の棲処(すみか)と信じてきたそうだ。