最も困窮している世帯の多くは家畜飼養を選択する傾向があった。農業用の土地がなく、職業技術もなく、病人や幼い子供を抱えていて外へ働きに行けない世帯が、消去法的に家畜飼養を選択するのだ。
家畜が激減して、圧倒的に供給不足の帰還地では、家畜の生産物は市場に持っていかずとも近所の人が喜んで買ってくれる。現金収入はわずかでも、自家消費によって子供たちの栄養状態は目に見えて向上する。
しかしモニタリングを通し、家畜飼養が最も軌道に乗りにくい活動であるということも分かってきた。大半の世帯は十分に知識があるわけではなく、「何となく」家畜を飼っているだけで、家畜に栄養が足りているのかも、病気の予防法も分からない。
そのため牛乳や卵などが十分に得られなかったり、家畜がすぐ死んでしまったりする。家畜飼養は家畜が死んでしまえばそれで終わりだ。
≪普及員養成 畜産農家の「ヒーロー」に≫
「獣医さんが来てくれない」という冒頭の声を頻繁に聞いた私たちWVのスタッフは、家畜生産衛生局を訪ねた。状況を改善してもらえるように依頼しようと思ったのである。ところがキリノッチ県家畜生産衛生局長が語ったのは、行政側の悲痛な現状だった。