もっとも、いま挙げたことからもわかるように、かれらは単純な生命の謳歌(おうか)主義者ではない。まったく反対に、人間の生命が真の意味で発露するのは、堪え難い逆境や負の要素との直面からという強い確信がそこにはある。
以下、彼らが会場に敷いた動線に沿って、その様子を追ってみよう。
魂の再生に繋がる
最初の小部屋で出会うのは「鯉(こい)のぼり男」だ。子供のころ、端午の節句を祝うための鯉のぼりは、それ自体、生命力の象徴だ。が、現実はどうだろう。風がなければ力なく垂れ下がったままで、雄々しくはためいていることのほうが珍しい。また子供が成長してしまえば、所在さえあやうくなってしまう。
東日本大震災で家が揺さぶられたのをきっかけに、不意に姿を現した古びた鯉のぼりを、かれらは今こそ生き返らせようと、みずから身にまとう。そして、スカイダイビングで、これ以上ありえないくらい風を浴びせ、天空を泳がせるのだ。鯉のぼりという行事にまつわる命懸けの「復興」が、震災からの魂の再生に繋(つな)がる瞬間だろう。