新しいものを好む京都の気風は、山鉾を飾る舶来の絨毯(じゅうたん)に象徴されるように、この土地ならではの温故知新の精神性に生かされている。祇園祭は日本各地の祭礼にも影響を与え、源流としての重みと誇りがある。吉田孝次郎会長が担っているのは、祇園祭のみならず、全国に派生した文化と、そこに共通する平安への願い、その世界観なのだと思った。
この夏、江戸時代末期に罹災(りさい)した大船鉾(おおふねほこ)が再建され、後祭(あとまつり)が復活する。平安時代から続く祇園祭本来の形に近づく、記念すべき年なのだ。絢爛豪華な祇園祭の祈りに、自分自身の気持ちが重なる瞬間を、今年も大勢の人々と共に味わいたい。(写真・文:俳優・クリエイター 井浦新(あらた)/SANKEI EXPRESS)
■祇園祭 古くは祇園御霊会(ごりょうえ)、祇園会と呼ばれる八坂神社の祭礼。平安時代の869(貞観11)年、都を中心に疫病が流行し、それが祇園社(八坂神社)の祭神である素戔嗚尊(スサノオノミコト)のたたりとされた。当時の国の数66に準じて66本の鉾を立てて疫病退散を祈願したのが始まり。これまで32基すべての山鉾が17日に巡行していたが、今年大船鉾が再建されたのをきっかけに、49年ぶりに17日の前祭(さきまつり)(23基)と24日の後祭(10基)に分かれて本来の祭の形に戻して巡行が行われる。