地元の子供たちが「蘇民将来子孫也(そみんしょうらいしそんなり)」という護符のついた厄除けのちまきや蝋燭(ろうそく)を売り、「蝋燭一丁 献じられましょう」という呼び声で闇が華やぐ。願いを込めて、見物客も蝋燭に火をつけて奉納し、祈りをささげることができる。自分なりの祈り方を受け止めてくれる包容力を感じる場所だ。
そして祇園祭の中心行事である神輿渡御(とぎょ)。神幸祭(しんこうさい)では、3基の神輿を1000人以上の人々が担ぎ、揉(も)まれて暴れ狂う。躍動感あふれる瞬間だ。その後、神幸祭から還幸祭(かんこうさい)までの1週間、神輿に乗った御霊(みたま)が、町中の御旅所(おたびしょ)に滞在するというのが興味深い。
祇園祭のルーツは、平安時代、疫病や自然災害を取り払い、無病息災を祈念するために始まったと聞く。祈りと感謝をささげるという、根本にある普遍的な願いは、大きな祭りも小さな祭りも変わりない。祇園祭はさまざまな要素の集合体だが、その根底にあるのは、「祈り」という至極シンプルなものだ。