きらびやかな山鉾巡行に比して、屏風祭(びょうぶまつり)は、宵山の期間中、静かにひそやかに行われる行事だ。祇園祭を担う名家の町家では、代々受け継がれてきた屏風などの美術品を室内に飾り、近親者をもてなし、見物客も通りから鑑賞できるようにしつらえる。祇園祭山鉾連合会会長であり、祇園祭全体を束ねる吉田家にお世話になった。この家では、現代作家の作品を外側に、伝統的な作品を内側に飾るなど、その組み合わせに粋な計らいが感じられた。吉田孝次郎会長の話をお聞きした。祇園祭は時代とともに変化しており、一つ一つの行事を丁寧に行うことで精神性を取り戻していかなければならない。だから参加する人々に向けて、その本質を伝える使命があり、まず自らがそのことに生きようと務めねばならないのだと。その実直な姿勢が、僕の襟元を正してくれた。
≪平安への祈り 「コンチキチン」に乗せて≫
同じ宵山の深夜、一夜限りで行われる南観音山(みなみかんのんやま)の「あばれ観音」にも足を運んだ。ご本尊の楊柳観音(ようりゅうかんのん)をしばりつけた神輿(みこし)を激しく揺らしながら練り歩くというアグレッシブな祭りだ。