この高官によると、習氏が周氏の汚職問題を発表し、刑事事件にしたいとしており、周氏の後ろ盾である江氏の同意をも取り付けているという。しかし、李鵬(り・ほう)元首相(85)、宋平(そう・へい)・元政治局常務委員(96)ら党内の一部の長老は「汚職金額の全額返済と党内処分」で済ますことを主張しており、今でも慎重論は根強くあるという。
「刑不上常委」
北京の共産党史の研究者によると、かつての最高実力者、●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい)氏(1904~97年)は、党内対立が89年6月の天安門事件を誘発したことの反省から、党内の権力闘争の激化を避けるため、「刑不上常委」という言葉を残した。最高指導部である政治局常務委員経験者の刑事責任は追及しないという意味で、以降、党内の不文律となった。
今回、習氏が周氏の汚職問題を調査する背景には、周氏の汚職金額が数億元(1元は約17円)にものぼるとされ、大きすぎたことと、資金の流れの証拠が多数あり、事件として捜査しやすい側面があると指摘される。また、治安部門に大きな影響力を持つ実力者である周氏を倒すことで、習氏の求心力を高めたい思惑もある。