【世界川物語】
荒涼とした秋の大地に、何千ものモスグリーンのヘルメットが縦横に並ぶ。あるものは新聞紙大の盛り土の上に、あるものは真新しい墓石の上に-。ロシアの「母なる川」ボルガ川西岸の100万都市ボルゴグラードの郊外、ロッソシカにある旧ソ連兵の集団墓地で、兵士たちは今も隊列を組むかのように整然と眠る。
第二次大戦で米英ソなど連合軍がドイツに勝利する転換点となった歴史的激戦、スターリングラード攻防戦の舞台の一角だ。「スターリンの都」を意味するスターリングラードは「ボルガ川の都」ボルゴグラードの旧名。市街戦が有名だが、郊外の戦闘も激烈だった。
味方からも撃たれ
墓地の向こうで、軍服のようなカーキ色の影が動いた。10代の若者たちが6人、野外で食事を取っていた。傍らに立て掛けてあるのは銃ではなく、スコップ。兵士たちの遺骨を探しているという。二千数百キロ離れた西シベリア北部ハントゥイマンシースク自治管区の田舎町からボランティア活動に来ていた。