ただ、上海の経営コンサルティング会社、TNCソリューションズの呉明憲社長は、「外資系企業からみて、どこまでが慣習に基づく『ギフト』で、どこから違法な『賄賂』なのかあいまいだ」と警告する。中国で捜査対象となった場合、中国の司法当局は違法な賄賂と判断する線引きを、状況に応じて恣意的に決められるからだという。
自動車部品大手の元専務の場合、中国で「ギフト」をめぐる感覚がまひし、日本の法令違反を犯したことに頭が回らなかったのか、あるいは10年前からの習慣として「ギフト」を贈り続けた結果、時代の順法意識とズレが生じたのかもしれない。
巧妙な手口も横行
過去には贈賄事件の立件基準として、個人への贈賄額は1万元(約16万5000円)以上、組織単位では10万元以上という見方が出回ったことがある。だからといって「ギフト」の額が数千元なら“合法”かというと、それも状況次第で線引きははっきりしない。公務員や国有企業以外の民間取引でも商業賄賂が問題視されるが、外資系企業のビジネスマンは現場で、社内のコンプライアンス(法令順守)に加え、中国の法令のあいまいさに振り回されることになる。