患者のプライドを保ち、さりげなくサポートを
ここまで列挙してきた課題以上に重要なのが、認知症に対する誤解と偏見を取り除くことである。
認知症患者のすべてが徘徊(はいかい)や妄想、暴力といった症状があるわけではない。発症後も働いたり、ボランティアをしたりする人は少なくない。
患者が落ち着いて暮らせる環境を用意したほうが症状の改善に効果的ともされ、むしろ病院に入れられたことで悪化した事例もある。
ところが、介護する家族のほうが、自分を認識してもらえない辛(つら)さなどから疲弊しやすく、体調を崩したりする。結果的に、患者を病院などに預けざるを得ないというケースが少なくない。
認知症は、患者のプライドを保ちながら、さりげなく支えることがポイントとされる。家族の「介護疲れ」の悪循環を断ち切り、患者が住み慣れた場所で暮らせるようにするには、行政や医療機関の支援態勢の整備はもちろん、多くの人が患者への「接し方」を知ることが大切だ。
最近は講演などで自ら病状の啓発を行う患者も増えてきた。一部の自治体では政策に反映させようとの動きもあるが、患者の声に直接耳を傾けることから始めたい。
患者激増時代を乗り切るには、認知症患者に寛容な社会であることが求められる。