マンションくい打ちデータ偽装問題で、国土交通省が、くい打ち工事を請け負った旭化成建材に対し、建設業法に基づく立ち入り検査を検討していることが30日、関係者の話で分かった。問題の拡大を受け、同社の組織運営や施工管理の実態を解明する必要性が強まったと判断した。事態を重視した国交省は同日、くい問題に関する有識者会議を設置。広がる一方の問題への取り組みに本腰を入れた格好だ。東京都江東区の学校施設でも同日、くい打ちデータ流用が発覚。同社によるデータ偽装は3都道県で計5件になった。
石井啓一国交相は30日の会見で「旭化成建材の施工で複数地域で異なる担当者が施工データの流用を行っていたことは極めて由々しき問題だ」と強い懸念を示した上で、「(同社の)施工体制や社内のチェック体制、コンプライアンスについて徹底的に調査し実態を把握したい」と述べた。
国交省は、問題の原因が個人だけではなく同社の組織にもあるとの見方を強めており、工事現場の作業の流れや関係書類の作成、保管などを詳しく調べる必要があると判断したもようだ。
国交省が設置した有識者会議は、建築工学の研究者や弁護士らで構成され、建築基準法に基づく検査や報告のあり方などを検討する。11月4日に第1回の会合を開く。当初、マンション傾斜問題の再発防止に絞った議論を想定していたが、データ偽装が北海道釧路市の道営住宅や横浜市の市立中学校でも発覚するなどし、くい問題全体に対象を広げた。年内にも中間報告をまとめる方針。
一方、江東区は30日、区発注の学校施設で同社がくい打ち工事を行った46本のうち1本で他のくいのデータを流用したとみられると発表した。建物の傾きや不具合は見つかっていない。
旭化成は30日、子会社の旭化成建材が過去約10年間にくい打ち工事を実施した全国3040件に関する調査の進捗(しんちょく)状況を公表する予定だったが、同日夕、急(きゅう)遽(きょ)中止した。11月2日には、横浜市のマンション工事の担当者が関わった41件の調査結果を示すとしている。