新サービスが転換点
iモードの開発で中心的な役割を果たした現慶大特別招聘(しょうへい)教授の夏野剛(51)はサービス開始前、iモードにコンテンツを供給する企業を一社一社説得し、67社をそろえた。「当初、月額課金への抵抗感は強く、説得は大変だった」と振り返る。「しかし、後で全員に感謝された。iモードは初めて、コンテンツへの課金を成立させたビジネスモデルだった」
夏野はiモード携帯にプログラミング言語「Java」を導入した。これで開発が容易になり、飛躍的な発展を遂げるのが、携帯電話向けのゲームだ。
「これからはモバイルでいく」。グリー社長の田中良和(40)は2006年春、東京・六本木の本社に当時まだ十数人だった社員を集めて宣言した。当時の主力事業は交流サイト(SNS)運営だったが、提供していたのは主にパソコン向け。iモードで始まった携帯によるネット向けに舵を切ったのだ。
グリーはKDDIの携帯の公式メニューとしてSNSを提供。また、利用者が交流する際の話題づくりに有用だと判断し、07年に携帯で手軽に楽しめる釣りゲーム「釣り★スタ」をリリースした。ゲーム自体は無料で楽しめるが、利用者は“釣果”を挙げるためにお金を払ってアイテム(道具)を買うことができる。普段ゲームをしない人を含む多くの利用者による課金収入が膨らんだ。現取締役の荒木英士(34)は「『(ビジネスモデルを)掘り当てた』という手応えがあった」と話す。