■技術を基盤に新しい価値創造
--政治が動いた2016年だった
「欧州、米国、韓国、フィリピンと、大きく動いている。経済が政治に影響を与えるのではなく、逆に与えられつつある印象だ。後に振り返ったら歴史の転換点だったと思うであろう1年だった。入社したときから、グローバリゼーションや多様性は普遍的な価値観と認識してきたが、(複数の国家で課題を解決する)多国間主義的な考えは後退しているのかもしれない」
--昨年4月に新中期経営計画を始動させた
「基本戦略の一つに『ポートフォリオの高度化』を掲げ、『環境・エネルギー』『ICT(情報通信技術)』『ライフサイエンス』を中心に、技術で勝負できる分野に経営資源を集中投入している。円高や、主力商品の飼料添加剤『メチオニン』の値下がりもあり、業績的には最高益だった前期から後退を余儀なくされているが、戦略を前倒しで実行できた点は非常に良かった」
--中期計画では、3年間で予定する投資の過半を今期中に実行する
「4000億円の投資とは別に、3000億円のM&A(企業の合併・買収)枠を確保しているが、大半を今期中に使う。一方、17年度、18年度は意識的に投資を減らすわけではない。(前期までに)有利子負債は8000億円台まで減少したが、さらにM&Aを行う場合、財務が悪化しない限り1兆円までは増えてもいいと考えている」
--サウジアラビアで運営する石油化学コンビナート「ペトロ・ラービグ」の収益が安定しない
「石化事業はサウジとシンガポール、日本の3カ所体制で生き残る方針だ。日本は基礎原料となるエチレンの生産設備を止めて収益が改善した。シンガポールは好調が続いている。問題はラービグだ。第2期拡張工事が遅れ、稼働中のプラントがトラブルもあって稼げていない。安定稼働への手応えは高まっている」