ベトナム戦争の爪痕として問題となっている枯れ葉剤由来のダイオキシンによる土壌汚染。清水建設は、汚染物質を薬剤の泡の表面に付着させて分離・除去する独自洗浄技術で、土壌を無害化できることを確認した。
同社の土壌洗浄技術は、フルイやサイクロンによるふるい分けで細かくした75ミクロン~2ミリメートルの砂に含まれているダイオキシンなどを化学薬剤で洗浄する「フローテーション」だ。薬剤液の気泡が砂に吸着しているダイオキシンや有機物などをはがし取り、ダイオキシンの除去率を95%まで高めた。
同社は昨年3月、ベトナム空軍主催のセミナーで自社の土壌洗浄技術を紹介。今年2月からは、同国のビエンホア地区で回収した汚染土壌を日本に持ち帰り、洗浄実験を進めてきた。
薬剤の配合は、汚染物質の種類や土壌の状況などによって異なる。同社では、2002~10年に重金属、09~12年にダイオキシンの汚染土壌を洗浄するプラントを、それぞれ川崎市内で運営してきた。枯れ葉剤由来のダイオキシンの洗浄は初めてだったが、これらのプラントで培ってきた技術を生かし、洗浄効果の高い薬剤の配合を見つけた。
ダイオキシン汚染土壌の無害化処理をめぐっては、1000度以上の熱処理があるが、コストが高いほか、排ガス管理が必要だ。同社のフローテーション技術なら、熱処理での無害化処理と比べて2分の1程度のコストで済む。
ベトナム国内には、枯れ葉剤由来のダイオキシンの数値が高い地域は国内に28カ所あるが、ダナン空港でベトナム空軍と米国当局による洗浄対策が実施されているほかは、手つかずの状態だ。同社は「今後はベトナムにおいて、パイロットテストや大規模な浄化事業の実施などの可能性について広く検討したい」と話している。