住友と三菱、企業風土の垣根越え相乗効果 驚きのクレーン事業統合から1年 (3/3ページ)

2016.10.4 06:40

住友重機械搬送システムの新居浜工場で、船に産業用クレーンの一部を積み込む様子=9月29日、愛媛県新居浜市
住友重機械搬送システムの新居浜工場で、船に産業用クレーンの一部を積み込む様子=9月29日、愛媛県新居浜市【拡大】

 実際に住友重機械が強い造船所向けのゴライアスクレーンやジブクレーンと、三菱が得意な港湾荷役用のコンテナクレーンや発電所向けの揚炭クレーンの組み合わせで、ラインアップの厚みは増した。技術面では当初、ものづくりの方法が異なり、戸惑う場面もあったというが、今では住友重機械の高度な加工・溶接技術と三菱の自動化技術とサプライヤーの活用力を組み合わせ、市場での競争力強化に取り組んでいる。

 売上高6割増見込み

 今後の経営戦略では、幅広いラインアップを生かし、需要に応じて、柔軟に事業構成を組み替えながら、安定的に利益を稼ぎ出す方針だ。同時に海外市場の開拓にも力を入れる。統合効果で、今年度の売上高は14年度比6割増の500億円を見込んでいる。

 ものづくりに不可欠な産業用クレーンは、日本の近代化や戦後の経済発展に大きく貢献してきた。園部グループリーダーは「住友と三菱の統合で着実に技術を継承し、さらに強い事業に育てたい」と話す。

 日本経済を支えてきた重工業もグローバル化が進展し、今ではコスト競争力の高い中国や韓国メーカーとの受注競争が激しくなっており、技術を日本に残すには再編・統合による競争力の向上が欠かせない。

 住友重機械と三菱重工の産業用クレーン事業の統合は規模は小さいものの、伝統や企業風土の違いを乗り越えて成功すれば、他の産業分野の再編の決断を促す可能性もある。(黄金崎元)

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