■過去にもリコールや事故相次ぐ
イケアの製品は国内でもリコールや事故が相次いでいる。6月には、乳幼児用安全柵の鍵がきちんとかからず、子供がけがをする恐れがあるとして自主回収。平成26年9月には、天井などからぶら下げる形の子供用ブランコの部品が同社の品質基準を満たさないことが判明し、使用中止を呼びかけている。24年11月にも、乳幼児用ベッドの組み立て説明書に誤りが判明。けがをする恐れがある使用法を掲載していたとして、修正版の説明書を発表した。20年4月には、整理だんす組み立て中にねじが破損し、男性が目にけがをする事故が発生し、経産省から行政指導を受けている。
イケアなど量販店で販売される家具には、コストを抑えるため、説明書を使って購入者自身に組み立てさせる製品が多い。東京都内で家具販売店を営む男性(52)は「素人の技量で組み立てられる製品であるため、簡素な構造になっているケースも多く、耐久性が低い場合もある」と指摘する。
■専門家「信用失えばブランド失墜する」
イケア側は北米でリコール対象となったたんすについて「説明書通りに組み立てて使ってもらえば、安全上の問題はない」として、国内ではリコールしない方針。北米でリコール対象となった商品を含め、家具の購入者が店頭などに申し出れば、固定用具を無料提供するとしているが、国内向けに周知する予定はないという。
こうした対応について、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の釘宮悦子理事は「日本の消費者も不安になっている。安全に使うための対策などを迅速に情報提供するべき」と指摘する。
企業コンプライアンス(法令順守)に詳しい関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)は「同じ製品なら国内でも同様の事故が今後発生するリスクがある。北米だけの問題で、国内の消費者は無関係と判断しているとすれば、甘いといわざるを得ない。信用を失えば、ブランドは失墜し、長期的に市場を失う」と話している。