原油安による原料価格の下落で利ざやが拡大し、好業績を謳歌(おうか)する化学メーカーが、一部製品では採算悪化に苦しんでいる。中国の景気悪化や、中国勢の相次ぐ生産増強で、需要が供給を大幅に下回っているためだ。
中国を震源地とする価格競争に巻き込まれ、業績が悪化する鉄鋼業界と同じ構図が化学にも及んでいる。品質面で差別化しにくい製品ほど価格下落は著しく、こうした製品に生産品目を絞り込んできたメーカーは、生産集約などの抜本的な対応を余儀なくされつつある。
市況悪化にさらされている化学品の代表が、ナイロン原料のカプロラクタムだ。
国内最大手の宇部興産によると、ナイロンは衣料や食品パッケージなど幅広い分野で使われるのに対し、カプロラクタムは「製品にグレードが存在せず、差別化が難しい」という。
そのアジア価格は2011年時点で1トン3150ドルと高水準だったが、中国勢が相次ぎ市場参入した翌年から低下。最近の景気悪化でさらに値下がりが進み、直近の今年2月には過去10年で最安となる1175ドルまで下落した。