空の安全は操縦能力だけじゃない 日航パイロットが実践する“意外”な訓練 (4/5ページ)

2015.7.1 06:00

日本航空の塚本裕司機長(左)と田嶋雅彦機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター

日本航空の塚本裕司機長(左)と田嶋雅彦機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター【拡大】

  • インタビューに笑顔で応じる田嶋雅彦機長(左)と塚本裕司機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター
  • 「言語技術教育」で実際に使用しているイラスト
  • 羽田空港に到着した日航機
  • フライトを終え、駐機場で乗客を降ろす日航機

 現在、JALグループには約2400人(全員日本人で女性は15人、機長は約1300人)のパイロットが在籍しており、塚本・田嶋両氏を含む8人の機長が講師として言語技術教育に当たっている。パイロットは入社後に様々な部署に配属され、現場の仕事を学びながら訓練への投入を待つ。そして、訓練部に来たらすぐに言語技術教育を学び、その後も年に1回のペースで受講するという。

 パイロットのフライトスケジュールは、国内線の場合は日帰りのほか、1泊2日や2泊3日などいくつかのパターンがある。日帰りでも一日4本以上飛ぶこともあり、担当する路線や操縦する機種もいつも同じとは限らないという。そうなれば当然、言語技術を生かす機会は増えてくる。アメリカのフェニックスで行う飛行訓練でも、英語でのやり取りにおいて言語技術が有効になるのだそうだ。

 「言語技術」の効果を実感

 実際の効果はどうなのか。田嶋機長は「スケールがないので効果を計るのはなかなか難しいですが」と前置きした上で、「以前に教えた生徒とフライトが一緒になったときは『ここで誤解を防げたね』『こんなふうに安全に寄与できたね』といった実感は確かにあるんです」と手応えを口にする。安全運航を行うためには、ほんの少しのコミュニケーションエラーも許されないのだ。塚本機長は「筋トレみたいなもので、今日やったから明日160キロの球を投げられるわけではありません。まだ外部の人から『日本航空のパイロットも変わったね』と言われるところまでは到達していません」と積み重ねる大切さを強調する。

 いくら講師といえども、コミュニケーションにまつわる失敗談はある。

 田嶋機長は「何年も一緒に飛んでいる人と乗ると、ついつい『あれをオンにしておいて』と言ってしまうんですね。コックピットにはたくさんのスイッチ類があって、あれだけ大きいものがものすごいスピードで飛んでいますので、そういう部分では気をつけなければなりません。『あ、いかん、いかん』と気づいて、正式名称で言い直すことはあります」と苦笑い。

 塚本機長の体験談も興味深い。「言語技術を導入する前のことですが、私の前を飛ぶ飛行機から『この先、揺れる所がある』と情報をもらったんですね。それをキャビンクルーにも機内電話で伝えたんです、『◯分後に、これくらいの揺れがこれくらい続きますよ』と。そして、僕が一通り話し終えた後にクルーからこう聞かれたんですね。『それで、ベルトサインはつくんですか』と-。その瞬間『あ、しまった』と思いましたね。彼女たちにとって一番重要な情報は揺れの大きさよりも、サービスをやめなきゃいけないのか、片付けをしなくてはいけないのか、ということです。先ほども言いましたが、何から話すのかが重要なんです」

「日航さん、ぜひうちで出前講義をお願いします」なんて会社も…

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