マーケティング・リサーチが活躍するのは、第二の不確実性に対処しようとする場合である。このタイプの不確実性については、事象が生じる確率の分布を、事前に知ることはできないが、試行を重ね、その結果についてのデータを蓄積していく--すなわちマーケティング・リサーチを繰り返す--ことによって、高い精度の予測が可能になっていく。
だがナイトの不確実性には、さらに第三の不確実性がある。それは、結果がわからず、事象が生じる確率の分布も未知であることに加えて、この分布の唯一性を揺るがぬものと仮定してよいかどうかもわからないという場合である。
サラスバシ氏は、優れた起業家には、リサーチに向かうよりも、次のような行動に目を向ける傾向があることを指摘し、これをエフェクチュエーションと呼ぶ。たとえば、先の壺から玉を取り出すくじ引きであれば、何としてでも「赤」の玉を引きたいと思うプレーヤーは、ひそかに集めてきた10個あるいは20個の赤玉を、事前に壺のなかに入れようとするかもしれない。あるいは白玉を引いてしまった後で、このプレーヤーは、くじ引きの主催者や参加者を説得して、当たりの玉は「赤」ではなく「白」だというルール変更を認めさせようとするかもしれない。